地方銀行
(写真=PIXTA)

進む地銀の再編

足利銀行の親会社である足利ホールディングスと常陽銀行が2015年11月、経営統合の実現を目指して基本合意した。それぞれ茨城県と栃木県で確固たる地盤を築いている銀行であるが、統合により形成される広域ネットワークを活かして、より進化した総合金融サービスを提供し、また、業務の効率化も実現しながら、単独ではなしえないスピードと高い質で地域や顧客にこの統合の効果を還元していくとのことだ。

地域経済の縮小や周辺地域の少子高齢化を背景に、地方銀行は統合・再編が相次いでいる。熊本県の肥後銀行と鹿児島県の鹿児島銀行は2015年10月に経営統合し、「株式会社九州フィナンシャルグループ」となった。また、横浜銀行と東日本銀行も2016年4月に、共同で持ち株会社「株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ」を設立し、経営統合する予定だ。

経営統合後の視線は東京に?

地方銀行の統合・再編が行われているなか、常陽銀行と足利ホールディングスの合併で注目されているのが、新たな持ち株会社の本社をどこに置くのか、ということである。

それぞれの取引先に配慮し、茨城・栃木両県以外に設置するとも言われており、東京都内に置くことも検討されているようだ。

そもそも、両銀行の取引先が行っている営業活動はそれぞれの県を超えて拡大しており、銀行も県外へのネットワークを広げることにより、提供するサービスの質を高めたうえで支援をしていく狙いであろう。

また、東京に本社を置くことになれば、都内だけでなく営業基盤の手薄な南関東への進出の足がかりにもなる。

新たなサービスを始める地銀も

東京に商機を見いだそうとする地銀がある一方、地元の利用者向けに独自のサービスを打ち出している地銀もある。例えば、岐阜県に本店を持つ大垣共立銀行の「手のひら認証ATM“ピピット”」や「ドライブスルーATM」だ。「手のひら認証ATM“ピピット”」はキャッシュカードや通帳を持っていなくても生体情報(手のひら静脈)だけで取引ができる。車に乗ったまま窓口とATMを利用できる「ドライブスルーATM」は、自家用車の利用率が高い郊外ならではの店舗形態である。

他にも、支店がない地域向けには車に銀行機能を搭載した移動店舗「スーパーひだ1号」も走らせている。この移動店舗には銀行員もスタンバイしていて、預金やローンの相談にも乗ってくれるという地銀ならではの細やかなサービスが魅力だ。

一方、横浜銀行は日本郵政グループに銀行業務を委託して郵便局を銀行代理店とする協議に入っている。実現すれば、銀行がない過疎地でも郵便局で預金の出入金などができるようになる。過疎地での店舗展開に限界がある銀行側と、手数料を得られる郵便局側の狙いが一致したようだ。金融庁も過疎地の利便性が向上するとして、申請があれば許可する方針で、今後ほかの地銀も追随する可能性がある。

大前提は「地方経済を支えること」

金融庁は2015年、地方の中堅・中小企業に対し、地銀を中心とした銀行の企業支援についての全国調査を実施した。その結果、約3割の企業が「メインバンクと経営上の課題や悩みを全く相談したことがない」と回答しているが、約7割が「時々相談している」「日常的に相談している」とのことだった。

同調査では、事業内容等を理解した上での経営支援サービスは、売上げ・利益の増加や財務内容の改善等の効果が上がっている、との声もある。中小企業からは、経営が厳しい時期に支えてもらった、スピーディーに対応してくれる、ニーズを理解した対応をしてくれるといった声が挙がっている。

今声高に叫ばれる「地方創生」には、地域金融機関による地元企業の積極的な支援が不可欠である。地銀は、地域経済の活性化のために、主体的役割を果たさなくてはならない。そのためにも担保・保証に依存しない企業の事業性評価に基づく融資の拡大や今回評価の高かった経営支援サービス、具体的にはビジネスマッチングや事業承継、M&A支援などを積極的に提供していく必要があるのではないか。(提供: nezas

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