自動車業界
(写真=PIXTA)

自動車産業が裾野の非常に広い業種であるが、その規模がどのくらいで、わが国にどのような恩恵をもたらしているのかをご存知の方は少ないだろう。ここでは多少なりとも読者のみなさんの知識の足しになることを願って、関連業界のあらましを紹介していきたい。

いうまでもなく自動車は現代人にとって不可欠な存在だ。自分で車を所有しなくても、通勤・通学などの移動手段として使い、新聞や荷物などの配送の恩恵を受けている。自動車とそれに関わる部品・材料、技術、販売、輸送などの関連分野も含めると、自動車に関わりを持たない産業はほとんどないといっても過言ではない。

関連産業の就業人口は日本全体の約1割

初めに自動車関連産業の雇用という切り口でみると、就業者数は550万人程度で、日本の全就業数およそ6300万人の9%近くを占める。これを製造部門、利用部門など5分野に分けると、最も雇用が多いのは貨物・旅客運送を主体とする自動車の利用部門で、約280万人と半分強を占める。企業でいえば日本通運 <9062> 、ヤマトHD <9064> 、サカイ引越センター <9039> 、つい先日提携を発表した日立物流 <9086> と佐川急便といったところが大手だ。

次に多いのは110万人近くを抱える販売・整備関連で、企業としては日産東京販売HDや輸入車販売大手のヤナセ(非上場)が有名。トヨタも巨大販売会社を持つが、第2次オイルショック直後の80年にトヨタ自動車本体に吸収、大規模な「工販合体」として注目された。

その次に来るのが、いよいよ本体や部分・付属品を作る製造分野。全体では80万人程度と日本の製造業全体の約740万人の11%近くを占めるが、部分・付属品の製造分野が大半で、自動車本体の製造に関わっているのはわずか20万人足らず。自動車製造が典型的な組立産業であることを物語っている。

トヨタの販売台数は世界トップ

大手はいうまでもなくトヨタ <7203> 、日産 <7201> 、ホンダ <7267> など。トヨタ・グループは昨年、海外生産分も合わせて世界で1015万台強を販売、独フォルクスワーゲン(約994万台)、米ゼネラルモーターズ(GM、約985万台)を抑えてトップに君臨している。ただ、国内だけでみると同社単体の生産台数はその約3割の313万台だった。

その他2部門は、ガソリンスタンドや自動車保険などの関連部門と、鉄鋼、電機・電子部品などの資材部門で、いずれも約40万人の就業者を抱えている。資材部門では他に非鉄金属や化学・繊維、ゴム・プラスチックなど数多くの製造業が関わっており、自動車製造の裾野の広さを示している。ここではブリジストン <5108> を始め、ヘッドライトの小糸製作所 <7276> などが世界で存在感を示している。

自動車製造業を経済的観点で見ると、その出荷額は約52.0兆円(2013年工業統計)で全製造業292.1兆円の17.8%を占める。日本のGDP(国内総生産)がざっと500兆円であるのと比べると規模の大きさがわかるだろう。製造業全24業種のうち最も多く、2位の化学工業(9.4%)や3位の食料品製造業(8.5%)のほぼ2倍と断トツの出荷額を誇る。

出荷額は全製造業の2割近く

また付加価値、すなわち外部からの購入額を差し引いてその産業だけで生み出した価値は、製造業全体の15.7%を占め、これも上記2産業の10%前後という水準を凌駕している。ちなみに巨大産業とみなされる鉄鋼業のシェアは出荷額で6.1%、付加価値額は3.5%だ。

輸出額も大きい。日本の商品輸出額73兆円(2014年)のうち、二輪車や部品も含む自動車関連は14.8兆円で20.2%を占め、一般機械(19.5%)や電気機器(17.3%)を上回る最大品目だ。日本メーカーの多くは輸出以外にも世界各地で現地生産を行っているため、進出先でも多大な恩恵をもたらしている。

このように自動車関連産業は雇用、経済の両面で日本を支える基幹産業で、資源の乏しい輸出立国のまさに屋台骨だ。しかし現在、関連メーカーは大きな岐路に立たされている。世界の市場で電気自動車や自動運転技術などの新しい技術とその実用化が急速に進んでいるからだ。

新技術の台頭で岐路に立つ日本メーカー

電気自動車ではエンジンはいわずもがな、各種シャフト・オイル、排ガス浄化装置・部材など日本メーカーが得意とする多くの主要部品・部材が必要でなくなる。これは長い年数をかけて優れた技術を積み上げてきた専業メーカーの一部にとっては死活問題だ。

自動運転技術もその性格上、おそらく国際標準化されるだろうから、これに乗り遅れるとライバルとの競争で不利になる。自動車関連製造業の研究開発費は2.4兆円、全製造業の21.4%と飛び抜けて多い。これを新技術に注いで世界市場における地位をなんとか維持、向上させてもらいたいと願うばかりだ。(シニアアナリスト 上杉光)

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