節税対策に関しては書店に数々の指南書が積まれ、インターネット上には様々な情報が公開され、専門家でなくても基本的な対策は知ることができる状況となっています。しかしそのような情報に安易に飛びつき実行することはリスクが伴います。様々な情報に基づきいざ実行したものの、実際はほとんど節税効果がなかった、要件を満たしていない非合法的な方法で行った結果税務調査で指摘され重加算税をとられてしまった、節税対策が行き過ぎて資金がショートしてしまった、などの状況はあり得る話です。このようなリスクは節税対策の目的を理解した上で、その目的に合った節税対策を実行することが重要です。
節税対策の目的
経営者の皆さんはなぜ節税対策をするのでしょうか? 自分が儲けた稼ぎを国にとられてしまうのが単に嫌だという人もいれば、将来のために投資したい、資金繰りが厳しいから支払いを先延ばしにしたい、など様々でしょう。実は、毎期の税金を永久的に減らす節税対策として有効な方法は下記で述べるキャッシュが出ていかない永久的節税だけです。その他キャッシュが出ていく投資型節税、課税繰延型節税、キャッシュが出ていかない課税繰延型節税がありますが、これらは毎期の税金を永久的に減らす方法ではありませんので、目的によって使い分けるべきです。まずは永久型節税を検討し、その他の節税対策を目的に沿って考えていくことが大切です。
節税の種類と注意点
● キャッシュが出ていかない永久的節税
第一優先に考えるべき節税対策です。出張手当の支給や、中小企業だけに認められる機械等を取得した場合の特別償却費の税額控除の適用、役員報酬の額の設定等が挙げられます。
例えば、出張手当は会社で旅費規定を定めることによりすぐにできる節税対策です。会社で計上する出張手当(日当と呼ばれます)は会社が経費として計上できる一方、従業員にとっては給料とはならないので所得税がかかりません。
特別償却費の税額控除は要件を満たせば税額そのものを減らすことができます。機械等を定期的に購入する製造業であれば是非利用を検討すべきです。時限立法である租税特別措置法に定められており、適用要件や適用期間を事前にきちんと確認しておくことが必要です。
役員報酬は法人税法上毎月一定額を支払うものの、他に賞与等を支給したい場合には事前に税務署に届け出れば損金に算入することができます。必要な手続きを取るだけで大幅に税額が変わってくるため、支給額の設定は早いうちにしておき、届出書の提出期限や損金算入要件を事前に確認することが重要です。
● キャッシュが出ていく投資型節税
投資支出の前倒し実行が挙げられます。例えば来期以降に予定した事務所の修繕、社内旅行等を前倒しで実行して損金を増やす方法です。これらの方法は出ていくキャッシュ以上の節税はできないことを認識することと、キャッシュが事前に出ていきますので資金繰りに注意することが重要です。
● キャッシュが出ていく課税繰延型節税
中小企業退職金共済事業本部など各種保険への加入が挙げられます。保険料の支払いは損金となり節税効果はありますが、解約時に課税が行われますので単に課税を繰り延べる方法です。ただ保険料は本来保障の内容で選ぶべきものなので、節税対策という点ではあまり効果は期待できないでしょう。
● キャッシュが出ていかない課税繰延型節税
減価償却方法の変更、未払経費の計上、有姿除却、棚卸資産評価損の計上等が挙げられます。
例えば減価償却の方法には代表的なもので定率法と定額法がありますが、定率法の方が初期に多額の償却費を損金にできるため初期の段階では定率法で減価償却するほうが節税効果を期待できます。
この課税繰延型節税は、当期に予想以上の利益が出て納税額が増えそうなときにキャッシュを減らすことなくできる節税として、積極的に活用したい方法です。
多忙な経営者は専門家という選択も
上記で述べたように、節税対策と言っても様々な種類があります。どの節税対策も共通して言えることは「節税対策の目的」を明確にすることです。キャッシュが出ていかない永久的節税はまず考えるべき対策ですが、それ以外の節税は資金繰りや来期以降の利益計画とセットに慎重に検討していくべきでしょう。また、不要なリスクを軽減させるためにも適用要件や必要書類の提出期限等を事前に確認することが非常に重要です。
適用要件等を確認するのは書籍やインターネットの情報である程度可能でしょう。しかし経営者は日々の事業活動に忙しいものです。複雑な税法を理解するために膨大な時間とコストがかかり本業に支障をきたしては意味がありません。そこで、税法その他の法律に精通した税理士等の専門家にアドバイスを受けることが時間とコストを節約するためには有用ではないでしょうか。
費用はかかりますが、それ以上に価値のあるアドバイスを得られるでしょう。顧問税理士と契約しているのであれば、常日頃から節税対策に関する正しいアドバイスを受けられるよう、事業に関する情報を共有することが大切です。(提供: TRUSTAX )
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