Airbnb
(写真=PIXTA)

Airbnb(エアビーアンドビー)の普及、特区民泊条例の制定と、民泊を取り巻く環境が加速的に変わりつつあります。「不動産投資で民泊をしてみようか」と、検討している方もいるかもしれません。そのためには、まず民泊についての法律規制について学ぶことが大切です。今回は、民泊に取り組むに当たって注目しておきたいポイントを法律面から考えてみます。

民泊に対する法規制と論議

Airbnbの国内利用が増えるにつれて、民泊には、外国人訪日観光客の急増対策としての期待が集まると同時に、「旅館業法の許可が必要ではないか」という議論が起きました。

また、民泊を違法として関係者が逮捕されたケースも出ました。2014年には、東京都足立区の賃貸一戸建て住宅を宿泊施設(1泊1人2,500~5,000円程度)にして外国人旅行者に提供したとして、英国籍の男性が旅館業法違反(無許可で簡易宿泊所を営業した疑い)で逮捕されました。また2015年には、京都市右京区のマンションで、中国人観光客用の宿泊施設(1室あたり1泊6,000円程度)を営んだとして、旅行会社顧問と旅行代理店の男性が旅館業法違反(無許可営業)で書類送検されました。

つまり上記のようなケースは、旅館業法の許可を得ずに行う短期間の「民泊」が違法だと判断されたことになります。(ただし、これらは繰り返し注意したのに無視したという事情もあり「一罰百戒」の側面もあります。)

賃貸業は旅館業法が適用されるのか

Airbnbの出現以前、寝具付きのウイークリーマンションが出てきた頃から、「短期賃貸契約」と「旅館業」の境目が不明確になりました。法律で旅館業は「施設を設け、宿泊料を受け取り、人を宿泊させる営業」のことであり、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」と定義されています。

賃貸業との線引きは、「部屋の衛生上の維持管理責任が営業者にあるのか」「部屋を利用する人が生活の本拠としていないのか」の2点で判断されます。部屋の利用者が生活の本拠としている場合は、旅館業法の範囲外なのですが、利用期間が短くなればなるほど、境目は曖昧になるわけです。

旅館業を適用される施設は、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4種類があり、規制の内容は少しずつ異なります。ここ数年、「民泊の施設はどれにあたるのか」を巡って、様々な論議が続けられてきました。

民泊適法化のモデル ─大田区民泊特区条例

違法扱いされる可能性のある「民泊」ですが、これを適法にする方策は2つあります。いずれも法律に関わるもので、1つは、国家戦略特別区域法(特区法)に基づき、要件を満たした民泊を旅館業法の適用除外にするというもの。もう1つは、旅館業法を改正して民泊の規制緩和を図ろうというものです。

まず前者ですが、2013年12月に成立した「特区法」では、特区内で一定の要件を満たした民泊に対して、旅館業法の適用除外を規定しています。特区地域は政令で決まっていて、その自治体が条例を制定することが必要です。その中で、東京都大田区が2015年12月に特区民泊条例を施行しました。2015年10月に条例を作った大阪府は16年4月施行、16年1月に条例が成立した大阪市は、10月以降に施行される予定です。この流れから大田区条例がモデルになるでしょう。

特区内のどの地域でも民泊が可能なわけではありません。大田区では、第1種、第2種の低層住居専用地域、中高層住居専用地域などを除く6つの用途地域内で、「6泊7日以上の宿泊が対象」「居室床面積25平方メートル以上」(特区法通り)であれば、「清潔な居室の提供、外国人旅客の滞在に必要なサービスの提供」ができます。

また、大田区条例では近隣への周知徹底についても規定があります。これに関しては、分譲マンション内で民泊運営希望者と、民泊させたくない住民の間で対立が起きる可能性があり、大手不動産会社の中には、「民泊禁止」をマンション管理規約に盛り込んで販売する動きもあります。

現状のマンション管理規約が「民泊」に触れていない場合、民泊が管理規約違反かどうかの解釈について、「管理規約の改正は必要なし」か「必要」か、国の判断はまとまっていません。

高まる旅館業法改正による規制緩和への期待

次に、旅館業法の改正による民泊適法化についてです。現在、旅館業法の中で民泊の許可を取ろうとすると、その許可形態は「簡易宿所」となりますが、今の法律運用と合わないため、簡易宿所の要件を緩和しようという動きがあります。

その旅館業法改正は16年春に行われる可能性があります。そうなれば、施行日以降は「6泊7日」の宿泊制限や「実施地域」という地域制限が取り払われ、民泊は、法律上問題がなくなります。

欧米各国では、民泊を「住居の短期賃貸」として合法化する国や州が増えています。日本でもそうなれば「住居の短期賃貸」という言葉で分かるように、「民泊」は不動産業の1つとして取り組める時代になるわけです。

すでに大手不動産会社の中には、民泊事業への対応を始めているところが出ています。民泊と短期・中期の賃貸サービスを始めているところや、賃貸大手の中には民泊紹介サイトと業務提携したところもあります。今後さらに民泊を不動産投資の一環としての取り組みが整いそうです。(提供: 不動産投資ジャーナル

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