マネーストック統計,マイナス金利の効果
(写真=PIXTA)

貸出動向: 円高が伸び率を押し下げ

日銀が4月12日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、3月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.0%と前月(前年比2.2%)から低下した。貸出の増勢自体は続いているものの、昨年8月(2.8%)をピークとして伸び率は低下基調にある。

業態別に見ると、都銀等が前年比0.7%(前月は1.0%)とかなり低下、地銀(第2地銀を含む)も前年比3.3%(前月は3.4%)と小幅に低下している。

前月同様、昨年夏を境に為替の前年比での円安幅が急速に縮小、さらに2月以降は円高に転じたことが外貨建て貸出の円換算額を押し下げ、貸出全体の伸び率低下をもたらしている。

一方、為替変動等を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(2月分まで・図表1)では、ここ数ヵ月伸び率は持ち直しつつあり、実態として貸出の伸びが減速しているわけではない(図表1~3)。

ただし、特殊要因調整後(2月分まで)で見ても、伸び率は昨夏の水準にほぼ戻った程度であり、マイナス金利の効果は今のところはっきり見えていない。

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なお、2月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が0.706%(1月は0.68%)、長期(1年以上)が0.867%(1月は0.939%)であった(図表5)。

同指標は毎月の振れがかなり大きく、変化が掴みにくい点には留意が必要だが、1月末のマイナス金利決定以降、国債利回りが大きく低下した割には、新規貸出金利への影響は限られている印象。実際、短期は前月から小幅に上昇したほか、長期は低下したものの、過去最低というわけではない。

これが単にタイムラグの問題なのか、それとも実態として貸出金利への波及が限定的なのか、もうしばらくデータが揃うのを待つ必要がある。

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