介護施設
(写真=PIXTA)

はじめに

高齢化が進むに連れて、医療や介護の注目度は高まりつつある。高齢者や、親が高齢者で介護の検討が迫られる中高年者にとって、介護は自らの問題として捉えやすい。介護サービスを利用する立場から、どういったサービスがあり、どの程度の費用で利用できるのかということに、関心が向きやすい。

一方、若年者にとっては、介護は、あまり馴染みがない。医療であれば、病気やケガで入院したり手術を受けたりすることもあるが、介護については、自分の問題として捉えることは難しい。

そこで、本稿では、若年者など、介護について、あまり馴染みがない場合に、まずつかんでおきたい介護施設の選定について、概観していくこととする。(*1)

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(*1)本稿は、「もう限界!! 親を介護施設にあずけるお金がわかる本」高室成幸 監修(自由国民社)、「親の入院・介護に必要な『手続き』と『お金』」中村聡樹(日本経済新聞出版社) などを、参考にしている。
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要介護状態になる原因

人は、誰しも、時とともに老化する。ただし、その老化の仕方は、人によって異なる。要介護状態になるまでや、その後の経過も、人それぞれだ。まずは、その過程を、大きく2つに分けてみよう。

1つは、徐々に要介護の状態になっていくケースである。これを、「漸次型」と名付ける。例えば、認知症により、徐々に、食事や入浴などで身の回りの世話が必要となる場合が、これに該当する。

もう1つは、突然、要介護の状態になるケース。これは、「突然型」と名付けよう。例えば、脳卒中で倒れて、身体機能の麻痺が残り、生活上、介助が必要となる場合が、これにあてはまる。

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重度の要介護状態(要介護4、5)の原因を見ると、脳卒中が第1位であり、突然型の占率が大きい。一方、死因別死亡率を見ると、1951~1980年の間、脳血管疾患は、死因第1位であった。

その後、脳卒中を引き起こす脳梗塞で、MRI(*2)での診断や、血栓溶解療法(*3)による早期治療など、医療技術が進歩し、一命を取りとめるケースが増えた。その結果、2011年には、脳血管疾患は、3大死因から外れた。ただし、死亡を免れても麻痺が残るなど、完治せずに、要介護状態となる場合が多いものと考えられる。

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(*2)MRIはMagnetic Resonance Imaging(磁気共鳴映像法)の略。
(*3)特に、発症後3時間以内にrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を行うと、症状が劇的に改善する可能性があると言われている。
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自宅での介護と、施設での介護

介護には、大きく分けて、自宅での介護と、施設での介護がある。

自宅での介護は、要介護者が自宅で生活しながら、介護事業者から、主に、訪問介護等の居宅介護サービスを受けるものだ(*4)。

この場合、介護事業者のサービスには、費用負担や、時間の面で限度がある。従って、自宅での介護の場合、介護のベースは、同居の家族とならざるを得ない。家族の仕事の継続や、身体・精神面の負担を踏まえると、対応できる介護には限界がある。

一方、施設での介護は、要介護者が介護施設で生活しながら、介護ケアを受けるものだ。自宅での介護に比べて、家族の負担は、大幅に軽減される。特に、重度の要介護者の場合、施設での介護のニーズは高い。

いずれにせよ、ケアマネージャーと十分に相談して、介護プランを設計することが基本となる。

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(*4)公的介護保険の介護給付には、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーションなど、13種類の居宅介護サービスがある。また、この他、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護など、8種類の地域密着型介護サービスもある。
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