介護施設を選ぶことの難しさ

要介護状態になって、入居する介護施設を選ぶ際に、直面することの多い難しさを見てみよう。

◆突然型の要介護状態では、介護施設の選定が難題

漸次型の要介護状態では、入居者の意向や、費用負担等を十分に踏まえて、プランを設計することができる。ただし、首都圏近郊の特養等、人気が高い施設では、待ち期間が数年に及ぶこともある。

突然型の要介護状態の場合、介護施設の選定は、難題となる。脳卒中等で入院、治療を受けた結果、幸いにも一命をとりとめ、身体機能の麻痺を軽減すべく、リハビリを開始したとする。患者本人も、家族も、やれやれと一安心するところだ。ただ、この頃から、退院後の患者の行き先が問題となる。

病気が完治すればよいが、身体の麻痺が残り、要介護状態となることも多い。その場合、自宅で療養しつつ、訪問介護等のサービスを受けるか。それとも、介護施設に入居して、介護サービスを受けるか、を決めなくてはならない。

その際、自宅での介護の場合の、家族の負担と、施設での介護の場合の、施設の空き状況や費用負担等とを、天秤にかけることとなる。仮に、高額の入居費用を賄うだけの資力があるとしても、終の住処(ついのすみか)として、施設を選定することは、容易ではない。

◆サ高住に入居して、検討時間を確保することも考えられる

突然型の要介護状態の場合、サ高住に入居して、介護を選ぶための検討時間を確保することも考えられる。サ高住は、敷金等はかかるが、頭金は不要なことが多い。月々の料金も、有料老人ホームほど高くはない。また、老健のような入居期間の制約はなく、いつでも入居・退去が可能である。

サ高住は使い勝手がよいため、入居のニーズが高まっている。これを受けて、事業参入が相次いでおり、事業者により、サービスの質が玉石混淆(こんこう)となっている懸念もある。政府は、サ高住の質を確保しつつ、戸数を、2020年までに60万戸に増やすべく、促進策をとっている。

おわりに (私見)

要介護状態になったときに、どの介護サービスを受けるか。施設での介護を選ぶのであれば、どの介護施設に入居するか、を決めることは難しい。介護プランの設計にあたり、ケアマネージャーと十分に相談することが必要であろう。検討に時間が必要であれば、サ高住へ入居することも考えられる。

今後、介護施設の整備や、介護人材の育成が進んでいく。政府は、2015年に掲げた新三本の矢の3本目「介護離職ゼロ」に向けて、動きを加速させている。その進捗に、引き続き、注目していきたい。

篠原也(しのはらたくや)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

【関連記事】
介護施設の拡充は進むか-待機高齢者を減らすには、何が有効か?
老衰の増加にどう向き合うべきか-老衰にも、インフォームド・コンセントは必要ではないか?
病院の待ち時間の状況-紹介状の義務化は、大病院の待ち時間を短縮できるか?
仕事と介護の両立支援に取り組む企業に朗報!~厚生労働省「お役立ちツール」の公開
医療の費用対効果-生活の質(QOL)の改善を、どう測るか?