5月相場は荒れ模様のスタートとなった。週明け2日の日経平均株価は、外国為替市場での急激な円高を受け大幅に下落。一時前週末比690円安の1万5975円まで売られ、およそ3週間ぶりに1万6000円台を割り込んだ。1ドル=106円台と1年半ぶりの円高水準に突入したことで、想定レートが同110円に集中する今期の企業の業績予想の下ブレリスクが高まった格好。株式新聞は緊急で各社の状況を調べた。(5月6日株式新聞掲載記事)
月末までに今期収益予想の為替前提を公表した主要な3月期決算企業74社のうち、約57%に当たる42社が1ドル=110円に設定している。4月28日に日銀が金融政策決定会合で追加緩和を見送ったことをきっかけに、それまで同111円台で推移していた円相場は、わずか2日で106円台前半まで急伸。早くも大半の企業の想定を超える円高となった。
半導体パッケージの新光電気工業 <6967> は、1円の円高が連結営業利益を年間10億円押し下げるもよう。今期は1ドル=110円を前提に営業利益40億円(前期比58%減)を計画するが、このままでは落ち込みが一段と大きくなる。デクセリアル <4980> やイビデン <4062> 、SMK <6798> 、川崎重工業 <7012> 、東邦チタニウム <5727> なども円高インパクトが比較的大きい上に、今期の為替レートを110円と甘めに想定している。
1ドル=105円、トヨタ紡織など
1ドル=105円とより保守的に設定している企業も集計対象の中に15社(2割)あった。セクター別では自動車関連でトヨタ紡織 <3116> 、小糸製作所 <7276> 、エクセディ <7278> 、東海理化 <6995> 、ジェイテクト <6473> など。建機でコマツ <6301> とタダノ <6395)、電機で三菱電機 <6503> といった企業が該当する。
トヨタ紡織は円高方向の為替前提に加え、1円円高による年間営業利益へのマイナス影響が推定0.5億円と小さく、業績計画の為替への耐性は相対的に強い。三菱電は円高によって今期の営業利益が500億円ほど目減りする計算だが、為替影響を除けば「前期比3%の増益となる」(三菱電の松山彰宏専務執行役)。
このほか、1ドル=105円前提の企業の今期の営業利益に対する為替感応度(1円変動当たり、年間)は、コマツが25億円(対今期計画比1.7%)、日本ゼオン <4205> が4億円(同1.4%)、エクセディが1.6億〜1.7億円(同0.9%)、小糸製が4億円(同0.5%)などとなっている。
円高メリット銘柄、JALに注目
一方で、円高が直接的に収益へのプラス材料となる企業の存在も見逃せない。業種では主に電力・ガスや空運などだ。
日本航空 <9201> の今期為替前提レートは1ドル=123円と、大きく時価とカイ離している。1円の円高が年間10億円の営業利益押し上げ要因となるため、仮に105円で推移した場合は単純計算で営業利益が180億円上積みされる。このため2010億円(前期比4%減)を見込む予想は、一転して増益となる可能性がある。なおANAホールディングス <9202> は、為替ヘッジによって円高・円安のいずれに動いても収益への影響はほとんど出ないという。
電力・ガスでは中部電力 <9502> 、沖縄電力 <9511> 、東京ガス <9531> などの今期為替前提が1ドル=115円。1円の円高が年間で経常利益に2・5億円のプラスに働く沖縄電力は、2日の株価が逆行高した。
このほか、セイコーエプソン <6724> は対ユーロでは円高デメリットだが、対ドルに関しては円高メリット(前提レートは105円、感応度は3億円)。また、2月期決算のエービーシー・マート <2670> も円高メリットで、今期は1ドル=110円程度を前提にしている。(5月6日株式新聞掲載記事)