チェックポイント③: 株主還元策~減配は極めて考えにくい。自己株取得に注目
16/3期の配当については、現在の会社予想を引き下げる銀行はまずありえないだろう(図表9)。
17/3期についても、減益予想の銀行も含め、殆どの銀行が一株当り配当額は維持するだろう。近年配当が引き下げられたのはリーマンショック直後くらいであり、マイナス金利導入は、銀行収益にとって痛いがそこまで大きなショックイベントではない。資本も当時に比べてはるかに厚い。
但し、減益で配当を維持する場合、配当性向が銀行の示す目標水準以上に上昇してしまう可能性がある。配当性向の上振れをどこまで許容するかは確認する必要があるだろう。
また、これまでも自己株取得を行ってきたMUFGや一部地銀については、17/3期も自己株取得を継続する可能性が高いと思われるものの、金額は利益や資本の見込み次第であることから、会社の方針発表に注目したい。
チェックポイント④:新中期経営計画の前提条件。金利等のシナリオが楽観的なら未達リスクも
今期は、マイナス金利導入後初めての中期経営計画スタートの年度となることから、各行が将来の利鞘をどう想定するのか、収益構成をどのように考えるのか、経費をどう圧縮するのか、再編や異業種買収等の抜本的な改革の意欲はあるのか等の様々な点に注目したい。
既に計画の概要を開示している銀行については、当期利益は上昇、ROE(株主資本利益率)やRORA(リスク資産に対する利益率)は横ばい程度としている銀行が多いが(図表10)、今後更に多くの銀行の中期経営計画が発表になる予定である。
マイナス金利の影響をどこまで加味しているかは銀行によりばらつきが生じる可能性が高く、それらの前提条件次第では計画が未達となるリスクがある。また、株主還元は総じて拡充の方向と思われるものの、規制強化も見込まれることから、各銀行がどの程度の還元率を想定するのかにも注目したい。
まとめ
17/3期は減益かせいぜい横ばいの利益計画を提示する銀行が多いだろう。しかし焦点はむしろ、17/3期の利益が「底」になり、18/3期から回復軌道に乗せられるかどうか、それに向けた施策が今期中に打たれるかどうかである。マイナス金利が当面続くと想定される中、18/3期以降の早い時期に減益が止まるような施策が早い段階で示されるなら、現在の配当利回りやバリュエーションから投資妙味は十分にあるだろう。
大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券
チーフ・アナリスト
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