プロ野球ビジネス,保有球団の歴史
(写真=PIXTA)

連日、熱い闘いを繰り広げているプロ野球ペナントレース。巨人や阪神をはじめ、ソフトバンク、楽天などふだん何気なく目にしている球団名だが、プロ野球の誕生以来、球団の親会社はさまざまな変遷を繰り返してきた。一番新しいところでは2012年の横浜DeNAベイスターズの誕生。

当時、ネットゲーム企業の「DeNA」がプロ野球球団のオーナーになるということで大きな話題を集めた。このケースが物語るように、プロ野球球団の親会社の業種は時代を映す鏡でもある。2リーグ制のペナントレースがスタートした1950年当時からの球団保有企業の変遷を振り返ってみた。

リーグ制スタートの年の親会社構成には隔世の感が

セ・パ2リーグによるペナントレースがスタートした1950年、参加した15球団の名前を見てみると、現在も残っているのは「巨人、阪神、中日、広島」の4球団のみ。パ・リーグの球団はすべて親会社が変わり、違う球団名となっている。

15球団の親会社の主な業種は、鉄道会社7社、新聞社4社、映画会社2社。中でもパ・リーグは西鉄、阪急、近鉄、南海、東急と7球団中5球団が鉄道会社だった。

当時の時代背景としては、戦後の復興時期であり、インフラ整備の中心として鉄道業界は右肩上がりの時代。さらに、球団を保有し、沿線にある球場で試合を行うことで鉄道の業績アップにもつなげる狙いもあった。新聞社が球団を新聞の拡販に利用しようとするのも、現在と変わらぬ構造と言える。

特徴的なのは、現在ではその名前を記憶する人も少ないであろう松竹ロビンス、大映スターズという映画会社を親会社に持つ2球団だ。松竹ロビンスはその後、大洋ホエールズと合併したが、入れ替わるように東映フライヤーズが登場。映画が当時の花形産業であったことを象徴している。大映スターズと毎日オリオンズが合併して誕生した大毎オリオンズ(現在の千葉ロッテマリーンズ)は、大映社長の永田雅一氏という名物オーナーが権勢をふるったことでも有名。

だが、大映は1960年代半ばからの日本映画界の斜陽化を受けて、1971年に倒産してしまった。(大映はその後、徳間書店の傘下に入り、「敦煌」やガメラシリーズなどの映画を製作したが、2003年、歴史に幕を下ろした)

名門球団が消え、新興企業が球団の親会社になる時代に

1960年代にも「国鉄スワローズ→サンケイスワローズ」、「東京オリオンズ→ロッテオリオンズ」と親会社の変更はあったが、球団の身売りが活発化するのは70年代に入ってから。1970年にサンケイスワローズがヤクルトアトムスに。72年には、かつて栄華を誇った西鉄ライオンズ、そして東映フライヤーズが、それぞれ太平洋クラブライオンズと日拓ホームフライヤーズに身売りするという大ニュースが発生した。

鉄道会社と映画会社というプロ野球草創期を支えた業種の企業が撤退するという、時代の流れを象徴するような出来事だった。日拓ホームは球団を1年間保有した後、日本ハムへ譲渡。太平洋クラブは5年後にクラウンライターに譲渡したが、そのクラウンライターも2年後に西武に売却と、短期間の球団所有に終わった企業が多かったのがこの時期の特徴でもある。球団を持つことによって、企業の付加価値を高めるという狙いが強かったのかもしれない。

1980年代は球団の売却という事態は発生しないまま推移していたが、1988年、2つの大きな親会社交代劇が発生する。阪急ブレーブスが金融業のオリックスに身売りし、南海ホークスがダイエーホークスに変わったのだ。オリックスの宮内義彦氏、ダイエーの中内功氏という、金融と流通をリードする時代の寵児と呼ばれた経営者がプロ野球球団のオーナーとなったことは、時代の流れに乗った新興企業がプロ野球球団を保有するという流れを象徴する出来事だった。

球界再編の主役を争ったのはインターネット関連企業

1990年代に入ると球団買収の動きは一段落していたが、2004年、球界に大きな変化が訪れる。親会社の業績不振による経営難に陥っていた近鉄バファローズが、ペナントレース最中の5月にオリックス・ブルーウェーブとの合併構想を発表。以前より球団経営に関心を持っていたインターネット関連企業ライブドアが買収に名乗りを上げたものの近鉄は応じず、9月に合併が正式に決まった。

これに対して、ライブドアは新球団を設立しての参入を表明。他球団のオーナーの中には前向きに受け止める声もあったが、対抗する形で、インターネットのショッピングモール最大手「楽天市場」を運営する楽天が新球団設立を表明。

インターネット業界を代表する2社が新球団のオーナーの座を争うという事態は、まさに時代の流れを象徴していた。ダイエーホークスをソフトバンクが買収し、ソフトバンクホークスが誕生したのもこの年である。そして、2012年の横浜DeNAベイスターズの誕生。今後もプロ野球球団の親会社が時代を映す鏡であるならば、次に舞台から姿を消す企業、新たに主役の座に就く企業はどのような業種になるのか、プロ野球ファンならずとも興味深いところだ。

【現在、プロ野球球団を保有している企業の業種内訳】
食品関係:3社
新聞社:2社
IT企業:2社
携帯会社:1社
鉄道:2社(1社は複合企業)
金融:1社
個人:1

(ZUUonline編集部)