東京マンション市場
(写真=PIXTA)

要旨

◆東京のマンション価格が高騰している。住宅ローン金利低下など価格上昇を後押しする材料もあるが、不動産市場の過熱を懸念する声も多い。

◆本稿では、代表的なファンダメンタルズ指標である年収倍率を応用して、東京のマンション市場を分析した。具体的には、年収倍率に住宅ローンの要素を加えた指標を「修正年収倍率」とし、バブルとされた局面などと比較することで、ファンダメンタルズからの乖離を検証した。

◆修正年収倍率は、東京のマンション市場がバブルだと判断できるほどの動きは示していない。住宅ローン金利低下による実質的な値引き効果が、マンション価格上昇の影響を打ち消しており、住宅取得者の負担はそこまで増えていない。

◆これまで住宅ローン金利低下がマンション価格を下支えしてきた。しかし、金利低下余地は限られ、さらなる価格押し上げ効果は期待しづらい。今後は所得が上向くかが、東京のマンション市場を占う上で重要であろう。

はじめに

東京のマンション価格が高騰している。2015年の東京都の新築マンション価格(*1)は、6,779万円と前年比8.4%上昇した(図表―1)。ミニバブル期のピークである2008年の5,993万円を大幅に上回る水準まで上昇したことなどから、不動産市場の過熱を懸念する声もある。

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その一方で、マンション価格上昇を後押しする材料もある。住宅ローン金利の低下だ。代表的な住宅ローン金利であるフラット35借入金利(*2)を見ると、2009年前半には3%程度だったが、その後低下を続け、2016年5月には1.08%と過去最低を更新した(図表―2)。

住宅ローン金利の低下が、住宅取得者の負担を和らげているのは確かだ。では、どのくらい負担軽減の効果があったのだろうか。また、現在の不動産市場をバブルとする主張もあるが、ファンダメンタルズと比較して現在の過熱感は強いのだろうか。本稿では、代表的なファンダメンタルズ指標の一つである年収倍率に、住宅ローンの要素を考慮した上で、東京のマンション市場の分析を行った。

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(*1)不動産経済研究所「首都圏マンション動向」の新築マンション価格を75m2換算(以下、新築マンション価格はマンション価格と呼び、マンション価格は75m2換算する)。
(*2)返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合の最低金利(以下、同条件のものをフラット35借入金利と呼ぶ)。
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