おわりに
本稿では、年収倍率に住宅ローンの変数を考慮した修正年収倍率を通して、東京のマンション市場を分析した(図表―15)。まず、年収倍率を見ると、東京のマンション市場は、地域を問わず過熱感が強い状況であることがわかる。一方、修正年収倍率からは、そこまでの過熱感はうかがえない。住宅ローン金利低下がもたらした実質的な値下げ効果の影響が大きいからだ。
東京都全体で見た場合や、その中でも東京都区部を見た場合、市場で懸念されているほどの過熱感は見受けられず、一概にバブルと判断できるほどの動きではない。但し、注意すべき水準であることは確かだ。また東京都下の場合は、ファンダメンタルズに沿った動きを示しており、過熱感はない。
住宅取得者の購買力は改善しているが、留意すべき点もある。購買力改善の要因が、住宅取得者の所得向上ではなく、住宅ローン金利低下によるものだということである。
住宅ローン金利は、既に下限近くに達しており、低下余地は限られる。金融面からのマンション価格押し上げは今後期待しづらい。今後、購買力改善の牽引役を、住宅ローン金利低下から所得向上に引き継ぐことができるかが、今後の東京のマンション市場の先行きを占う上で重要になるだろう。
佐久間誠(さくま まこと)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
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