Olympics
(写真=PIXTA)

2020年、いよいよ日本で東京オリンピックが開催されます。実に56年ぶりとなる日本でのオリンピック開催となりますが、オリンピック開催後の日本の不動産市況は、果たしてどのように変化するのでしょうか?

歴史を振り返ると、1964年の東京オリンピック開催後の約1年間、日本はいわゆる「オリンピック不況」に陥りました。しかし、その後はすぐに活気を取り戻し、オリンピック開催から4年後の1968年には、日本のGNP(国民総生産)は世界第2位となるまでに成長したのです。その後も高度経済成長は続き、不動産価格も上昇し続けました。そして、土地の価格は決して下がることがないという「土地神話」が喧伝され、この状況は1991年にバブルが崩壊するまで続きました。

今回、2020年の東京オリンピック開催に向けて、東京都中央区の晴海エリアには選手村が作られており、オリンピック後にはおよそ6000戸規模の住宅エリアになるプランが決まっています。その他の湾岸エリアも、オリンピック開催に向けて高層タワーマンションの建設計画が次々と立てられています。その数は、およそ1万戸にも及ぶとみられます。

不動産価格は上がっているが、オリンピック開催まで持たない可能性も…

2020年の東京オリンピック開催や日銀の大胆な金融緩和による円安などを背景に、海外投資家たちが東京の不動産を購入しており、今後1~2年は日本国内の不動産価格上昇が予想されます。中でも中国の投資家たちの影響で、東京のマンション価格は過去2年間で約11%上昇しています。彼らは東京や大阪といった、都市部の不動産見学ツアーなどにも積極的に参加しています。

中国の投資家たちは、2008年北京オリンピック開催時の北京エリアの不動産価格高騰から、東京オリンピックによる東京エリアの不動産価格上昇を見込んでおり、将来の値上がりを期待して、不動産を購入しているのです。

しかし、2012年ロンドンオリンピック開催でロンドンエリアも再開発されましたが、オリンピック終了後に調査したイギリス政府は「オリンピック開催と不動産価格に関連はなかった」と結論付けています。現在、東京の不動産に投資をしている投資家たちも、ロンドンオリンピックの事例を知っていると思われ、東京オリンピック開催前に売り抜ける可能性があります。本当にそうなれば、今上昇している不動産価格はオリンピック開催を待たずに下落に転じるかもしれません。

オリンピック開催後は人口が減少し、空き家が急増する?!

2020年前後の東京の人口と空き家の動向を予測してみましょう。総務省の「住宅・土地統計調査(2013年度)」によると、全国の空き家の数は820万戸あり、総住宅戸数の13.5%でした。

中でも、東京の空き家の数は約81万7000戸で、すでに全国一番多い状態です。オリンピック開催効果などを背景に、東京に人口が流入していますが、2020年にピークに達して、その後は徐々に東京の人口は減少すると予測されています。

また、バブルの時代に住宅を購入した、いわゆる「団塊の世代」の人々が東京オリンピック開催の前年の2019年には70歳になります。そのためオリンピック後にはこれまで住んでいた家を出て、老人ホームなどの施設や病院などの医療機関に入ることが予想されており、ますます空き家が増えていくと考えられています。

彼らの多くが、東京の郊外や埼玉、千葉、神奈川のベッドタウンなどに住宅を購入し生活を営んできました。そうした郊外の街から、急激に人口が減っていく可能性が高いのです。住む人がいなくなった戸建てが増え、入居者が減ったマンションで管理が滞り、街全体が荒れてしまうことも考えられます。

人口減少が続く地方都市では、すでに不動産価格が下落しているところが多数あります。東京オリンピックの選手村の跡地には6000戸規模のマンションが建設される予定ですが、2020年以降に始まる人口減少で、住宅が供給過剰となり、都内の不動産価格が下がる可能性も十分にあります。

金利の上昇が不動産価格にも影響

日銀の国債買い入れなどで、現在の日本の金利は非常に低く抑えられています。今後、東京オリンピック開催などによる経済効果でインフレが進み、日銀が政策目標とする名目インフレ率2%が達成されると金融緩和を続ける必要はなくなります。すると今度は、金利の上昇局面を迎えることになります。

日本の国債が信用を失い、国債価格の下落が金利上昇を招く可能性もあります。この場合は、好景気や、政府・日銀による政策的な金利上昇ではなく「意図せざる」金利上昇となり、ハイパーインフレを引き起こして景気動向や不動産価格に深刻な影響をもたらす可能性があります。

こうした金利上昇が2020年の東京オリンピック前に起きるのか、後になるのか、どの程度の上昇になるのかは予測できません。いずれにせよ、金利が上昇すると住宅ローンの金利も上がるため、ローンを組んで戸建てやマンションを購入する人が減ります。こうなると不動産事業者も販売価格を下げたり、用地の仕入れを抑え、供給を減らしたりすることになり、不動産価格は下がらざるを得ません。

まとめ

現在、オリンピック開催決定により、世界から高い注目を集める東京の不動産価格は上昇しています。しかし、冷静にデータを集めてみると、オリンピック後には東京の人口減少が予測されており、今後日本全体の不動産価格が毎年平均2%ずつ下がっていくという予測をする研究者もいるぐらいです。少なくとも東京オリンピック後でも不動産価格が上昇するという材料は見当たらないことから、一部の地域を除いて下落すると予想するべきです。やはり不動産市況は一時的なトレンドだけでなく、中長期的に捉えていく必要があります。(提供: TATE-MAGA

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