家計のバランスシート
(写真=PIXTA)

梅雨時期に入り、ボーナスが出ることであろう。経団連は6月7日、大手企業の今年夏のボーナス妥結額状況(第一回集計)を発表した。回答した95社の組合員平均は前年夏比3.74%増の92万7415円で、4年連続の増加となった。自動車を中心に業績が改善され、ボーナスを業績に連動させる企業が増えたのだ。ボーナスをもらって貯金や運用を考える方も多いが、家計を見直す良い機会にしていただきたい。

「家計のバランスシート」を考える

企業の財務収支を把握するために「バランスシート(B/S)」があるが、これは家計においても応用できる。家計簿をつけて家計管理をしている方も多いが、家計簿でわかることは現金・貯金のお金の流れ、この言葉を英語で「キャッシュフロー」という。キャッシュフローだけでは見えない家計の収支を把握することで見えてくる家計の問題点が見えてくるのである。

では、どのような手順で行えばいいのであろうかを見ていこう。

①「見える化」する

家計の健全度を見える化する上で、日本ファイナンシャルプランナーズ協会のHPからダウンロードできる家計のバランスシートが便利だ(https://www.jafp.or.jp/know/fp/sheet/)。

日本FP協会HP

左側の「資産」の欄に、現金、預金、解約金のある保険、株や投資信託などの投資残高、住宅や自動車などの資産価値を記入する。このうち保険、投資残高、資産価値は、少し面倒であるが「時価」を記入するのがポイントだ。記入時に売却したとしても購入時の価格であることはないので、購入時の価格を記入しても意味のないものになってしまうからだ。

右側の「負債」の欄には、住宅ローン・自動車ローン・カードローン・奨学金など返済義務がある負債を記入する。最後に「資産」から「負債」を差し引いた額が自分の「純資産」となる。

②「分析」する

このバランスシートも記入するだけでは意味がない。分析して今後の対策をねることが重要だ。チェックしておきたい項目をあげていこう。

□資産合計に対する負債合計の割合
□いざという時に使える流動資産がどの程度あるか
□負債残高のうち金利が高いものの残高がどれぐらい多いか
□資産のうち安定系と投資系の分散割合は適当であるか

資産合計に対して、負担合計の割合が高ければ「純資産」が少ないことになる。資産合計が4000万で負債合計が2000万である場合、負債の割合は50%となり、いざという時資産を売却すれば負債を返済できるということになる。しかし、この比率が100%を超えれば、負債を資産でカバーすることができない。

病気や失業によって収入が大幅に減ったり、災害にあったりなど思いがけない出来事があった時、家計が立ち行かなくなってしまうので改善が必要だ。

また、資産残高が多ければいいというものではない。資産残高のうち、住宅や自動車など「物」よりも現金や保険などの「お金」が少ない、いわゆる資産に占める流動資産の割合(すぐに現金化できる資産÷資産残高×100)が低ければ、突発的な出費に対処できない。あくまでもバランスが大事ということだ。

③「特定」する

「分析」ができたらそれぞれの負債について「特定」していこう。「家族が安心して生活できるように」と住宅を取得するために今ある資産の中では購入できないからローンを組むという負債は資産形成のための「良い負債・前向きな負債」と言える。

一方、「なくてもいいが自分のご褒美に」と購入する時計などを購入するために組んだクレジットカードの分割払いは「悪い負債」と言える。良し悪しを特定することで、貯金するよりも負債を減らす方を優先させるなどバランスを調整することができるのだ。

家族で家計のバランスシートを整理する

「特定」していくには、家族で家計について話し合うことも大切である。例えば、資産にはならないが「銀婚式の記念に」「子供の成人祝いに」など家族の大切な日に合わせた旅行やプレゼントのために組んだローンは家族にとって「悪い負債」とならず「良い負債」と判断することもできる。良い悪いは、その家族の価値観によって変わってくるといえよう。

バランスシートを作成することで、家計簿というキャッシュフローだけでは見えなかった問題点を見つけることができる。

ボーナスのタイミングや家族が集まる正月など定期的に家族でお金について話し合う機会を設けてみよう。家計のことを夫婦はもとより子どもにも開示して話し合うことで、家族全員でお金が貯まる家計を目指すことができる。家族で「良い悪い」の定義付けをして、家計のバランスシートを整理してみてはいかがだろうか?

稲村優貴子ファイナンシャルプランナー(CFPR)、心理カウンセラー
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆業務を行い、テレビ・新聞・雑誌などのメディアでも活躍中。 FP Cafe 登録FP

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