2020年、東京でオリンピックが開催されることが決定しました。「オリンピック景気」という言葉を耳にする機会も増え、不動産市場も活況です。
そんな今、「不動産はオリンピック前に売るべきか?」という議論がしばしば見られます。答えは人それぞれで、誰も確実なことはいえませんが、「売った方が無難である」という意見が多いようです。なぜそうなるのか、今回はその根拠について考えてみます。
1. 不動産価格を見てみる
オリンピック前に売るべきかという議論の前に、まず「今」の不動産価格はどうなのか? を見る必要があります。一戸建て、投資用マンション、分譲マンションなど、不動産にはたくさんの種類があります。今回は特に分譲マンションの価格推移に注目します。その理由は、分譲マンションは購入者の母数が不動産の中で一番多く、消費者マインドを反映しやすいからです。
では、「今」のマンション価格は高いのか、安いのか。結論からいうと、ここ10年で最も高い水準に位置しています。下表は、国土交通省の公表による、首都圏と近畿圏の新築マンション平均価格(平成26年時点)です。
また、中古マンションの価格は、基本的に新築マンションの価格と連動します。そのため下表の通り、新築マンションと同様、ここ10年の中では高い水準で推移しています。
これらの価格推移を見ればわかる通り、分譲マンション価格は今、高い水準にあります。この状況の中、一戸建てや投資用マンションの価格が下落しているとは考えにくく、不動産価格は全体的に「高い」といえます。
もちろん、今後も不動産価格が上昇する可能性もあります。しかし、少なくとも高い水準にある「今」、不動産を売却することに大きなデメリットはありません。「今」の不動産価格から判断すると、オリンピック前に売った方が無難ということです。
2. 今後、オリンピック景気はどうなる?
今後も不動産価格は上がるのでしょうか? それは未知数ですが、「下がる可能性がある」という説明は可能でしょう。不動産業界におけるオリンピック景気は、「消費者マインドの上昇」と「建築費の高騰」という2点が挙げられます。
上述のように、近年、マンション価格は高騰しています。しかし、下表のように、新築マンションの契約率は好不調の70%を上回って推移してきました。リーマンショックで底を打った(2008年)反動で、マンションの契約率は回復しました。その後、東日本大震災などを経験しましたが、今も高水準を維持しています。
新築マンションの価格が上がり続けているにもかかわらず、契約率が維持されているという点は、オリンピック開催による消費者マインド上昇の恩恵もあるでしょう。
2010年頃を境に、住宅建築の建築費指数は上昇を続けています。これには、数年前から始まった中国好景気(ミニバブル)や東日本大震災の復興需要など、さまざまな要因がありますが、オリンピック開催決定後の資材高騰もその一つです。これはインフラ設備や競技場の建設などの建設需要が増したことによります。もちろん、資材だけでなく職人需要増加による人件費の高騰もあるでしょう。
ただし、今後の中国のミニバブルも収束を迎え、東日本大震災の復興も進み、オリンピックの建築物も着々と進んでいます。つまり、今後は需要が急増するとは考えにくいので、これ以上建築費が上がる可能性は低いといえます。
ただし、2015年末~2016年初頭に向けて、下表のように契約率の低下傾向が見られるのも事実です。2015年9月~2016年4月を見ると、8ヵ月のうちの6ヵ月が、好不調のボーダーである70%を下回っています。これはリーマンショック後の2009年以来の数字です。
いつまでも上がらない賃金、目標に達しない物価上昇率などの影響で、消費者マインドが少しずつ下がっているようです。また、上述の通り、建築費は下落する可能性があるため、不動産会社が価格を下げやすい環境となる点も、価格低下の一因になりそうです。
新築マンションの価格が下がると中古マンション価格も連動して下がります。そうなると投資用マンションなどにもその影響は波及し、不動産価格自体が下がる可能性が高いです。これらの理由から、今後オリンピック景気の恩恵を受け、不動産価格が上昇し続ける可能性は高くはないという見方ができます。
まとめ
上記により、「不動産はオリンピック前に売るべきか?」という議論において、「今売った方が無難」という意見が多いことはおわかりいただけたと思います。ただし、賃金上昇率やインフレ達成率などが改善され、不動産価格はさらに伸びると思っている人たちは、現在も積極的に不動産投資をしています。
いずれにしろ、不動産市況は活況であり、物件数も多く、情報もたくさんあります。エリアや価格、時期を見極めた上で、不動産売買をするには、とても良い時期といえるでしょう。(提供: 不動産投資ジャーナル )
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