どうなる? 交渉6年目の日EUのFTA交渉

一方、日本とEU間のFTA交渉はBrexit問題の影も形もなかった2011年から既に5年16回の交渉を経て大詰めに差し掛かっている。今年5月のG7伊勢志摩サミットに際、関係首脳から、本年のできる限り早期に大筋合意に達するとの共同ステートメントが発出されたばかりだ。

EUが域外国と結んだFTAはノルウェイ、スイスなど比較的小国との取決めがほとんどであり、米国、日本、中国などの主要パートナーとはWTOベースの通商体制が続いている。また2011年には韓国と、2014年にはカナダとの間にFTAを成立させた。前者は対アジア諸国としては初だ。後者はG8(主要8カ国)メンバーと結ぶ初のFTAであり、2013年以来交渉過程にある米国-EU間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の「ひな形」になるともみられている。

WTOの多角的貿易交渉ドーハラウンドが、先進国と新興国の対立で立ち往生する中、世界の通商枠組みはこのTTIPや今年2月に署名まで済んだTPP(環太平洋連携協定)などの「メガFTA」が主流となる傾向を見せている。日-EU間FTAもこうした構図の中でとらえるべきものだ。

Brexitにより欧州各国で、またこの秋の大統領選結果次第では米国でも保護貿易主義が勢いづく可能性もあり、日-EU間FTAの本年中大筋合意が実現できるかどうか、そもそも英国抜きのEUとのFTAに意味があるのか、怪しくなってきたことは否めない。ただ、悲観ばかりするには及ぶものでもない。Brexitで二つに割れた欧州が競って日本の資金力や技術力にアプローチしようとする可能性も高い。日本にとって今の状況は英国ともEUとも絆を深めるチャンスと捉えるべきだろう。(岡本 流萬)

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