日銀の物価安定、早期実現の可能性は高まらず

前回の基準改定時には、ウェイト変更や品目の追加・廃止やモデル方式の改定で、0.6%下方修正された。それ以前の改定でも連続的に下方修正されている。
(1995年:-0.1% 2000年:-0.2% 2005年:-0.4%)

今回の基準改定では、運賃などのモデル方式の見直しや、家電製品など値段変動の激しいもののウェイトが下がる。12日には過去の物価指数を2015年基準に、調整した時系列が発表された。6月のコアCPIの前年同月比は-0.5%から-0.4%へ0.1ppt若干上方修正されたが、過去1年の前年同月比の平均の変化は無く、大幅に下方修正された過去の改定と違い、今回は上下の影響が相殺された形になり、基準改定による修正はほとんどなかった。今回の基準改定で日銀の2%の物価安定目標の早期実現の可能性が高まることはなかった。

7月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.5%と、5ヶ月連続のマイナスを予想する。新しい基準では、7月は若干下落幅が拡大することになる。

失業率の低下と総賃金の拡大、これまでの過度な円高の修正とインフレ期待の上昇の効果により、1%程度の物価上昇の中期的なトレンドは継続していると考える。一方、7月のコアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)は+0.3%と、新基準の6月の同+0.5% (+0.4%から上方修正)から上昇幅が縮小するだろう。

コア消費者物価は2017年から持ち直しの予想

10-12月期にコアに続き、コアコアも一時的な下落に転じる可能性があり、原油価格の下落の影響だけでは、物価低迷が説明できなくなっていることを示すだろう。2014年の実質GDP成長率が、消費税率引き上げにより潜在成長率を下回り、2015年と2016年が潜在成長率なみにとどまり、需要超過幅の拡大のペースは明らかに遅れており、そのことが物価低迷の大きな原因となってきているようだ。これまでの原油価格下落と円高の影響が残ることもあり、2016年の年末までは、コア消費者物価は下落を続けるだろう。

内需の回復と円安の再開などにより、2017年から持ち直すだろうが、年末までに+1%程度の中期的なトレンドまで戻るのが、精一杯だろう。2017年後半には、日銀がまた2%の物価目標の達成時期を現在の「2017年度中」から、「2018年度中」に先送りすることになるだろう。しかし、9月のこれまでの金融政策の総括的な検証で、物価目標は「2年」を念頭に早急に達成するものではなく、中長期的なものに変更することにより、そのような先送りが直接的に追加金融緩和につながらない形になる可能性がある。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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