かつて死病と恐れられ大流行した感染症が「再興感染症」として復活している。更に困ったことに、近年抗生物質の効かない薬剤耐性菌に進化しているのだという。感染症の原因菌が薬剤耐性を持つと、従来の治療法が通用しなくなる。そのため、効果のある治療薬が開発されるまでに流行した場合、危険にさらされることになるのだ。

眠りから覚めた感染症 日本の外では流行中だった

最近、増加している「再興感染症」は、結核、マラリア、デング熱、狂犬病、コレラの5つである。

「亡国病」と恐れられ、偉人達の命も奪った 「結核」

数年前に芸能人が感染したことで、にわかに注目を集めた結核。幕末の志士である高杉晋作や、池田屋での喀血(諸説あり)も知られる新選組・沖田総司、俳人・正岡子規、作家・樋口一葉など若くして亡くなった偉人も多い。その治療薬としてペニシリンが伝わったのは、明治期に入ってからである。

実は日本、結核患者が先進国の中でも多く、「結核中進国」と位置づけられている。中でも、薬が効かない「(超)多剤耐性菌」による感染者が増えている。感染した場合、抗生物質が効かず除菌も難しいことから、死亡する場合もあるのだ。

結核が再興した理由は多剤耐性菌の出現以外にも複数ある。免疫のない若い世代の集団感染、発見時すでに重病化しているケースの増加、高齢者などの発病増加があげられる。

厚生労働省の平成26年度集計結果によると、働き盛りの30代の結核感染者数は1235人で、16人に1人が感染している計算だ。初期症状は風邪と間違いやすく、倦怠感、体重の減少、食欲不振などに加え、大量の寝汗や微熱、咳や淡が出る。こうした症状が長く続いた場合には、仕事が忙しくても、早期の段階で検査を受けることが重要だ。

蚊が媒介し、世界で年間約2億人が感染 「マラリア」

蚊が媒介する感染症が多くあるが、その中でもマラリアは比較的名前を知られた病気だろう。2014年の国立感染症研究所の調査によると、30代感染者は感染者全体の30.9%の162例。感染者の多くは、公衆衛生の環境が整っていない発展途上国、中でもアジア、オセアニアやアフリカの熱帯や亜熱帯地域で感染している。かつて日本にも、土着のマラリアが存在したが、現在報告されているのは海外で感染したケースで、土着のマラリアは撲滅されている。

マラリアを媒介するのは、ハマダラ蚊という高緯度地域に生息する蚊で、さされることで感染する。潜伏期間が1週間から1カ月程あり、発熱、嘔吐、関節や筋肉痛、頭痛、寒気の症状が出てくる。

ハマダラ蚊は夕暮れから明け方にかけて活動するので、気温が下がってきたからと言って日差し避けの上着を脱いで肌を出さず、長袖・長ズボンの着用を心がけたい。また、マラリアは予防・治療のできる病気なので、感染地域行く前に予防薬を処方してもらうのも有効だ。