現在、日本では「非正規雇用」が大きな社会問題となっている。厚生労働省が発表した資料によると、2015年には雇用者全体の37.5%が非正規雇用労働者と、その数字は4割に迫りつつある(雇用者は役員を除く)。非正規雇用の増加が、伸びない消費や、経済の動向に影響を与えるのは当然だ。

一例を挙げると、これと連動していると思われる数字に、自動車保有台数統計がある。全国軽自動車協会連合会によれば、2015年に、日本で保有されている全自動車約7700万台のうち、軽自動車全体が占める割合は39%と、ほぼ非正規雇用者が占める割合と同じであった。どちらも年々伸び続け、いまや半分を占めようという勢いである。

なにをもって「同一」とするのか?

雇用問題は、政府にとっても、景気を大きく左右する上で、重要な関心事となっている。GDP国内総生産を600兆円にするための「ニッポン一億総活躍プラン」が2016年6月2日に閣議決定した。秋には、これをもとに大型の経済対策をまとめる方針だという。

このプランの柱のひとつが、「同一労働同一賃金」だ。確かに「同じ仕事をするのなら、同じ賃金にするのが当たり前」である。しかし実際には、それを実行するのは一様ではない。

まず、「何をもって同一労働というのか?」という基準の問題がある。見た目は同じように見えても、責任の重さや習熟度、「転勤に応じられるのか?」といった細かい違いがあり、それをどうやって区分けし、何をどう評価するのか、といった問題である。

「同一労働同一賃金」を巡る問題

さらに、「給料」と一言にいっても、果たしてそれは「時給」のことなのか、「日給」なのか「月給」なのかによっても変わってくる。終身雇用を前提としたサラリーマンには、賃金上昇カーブというのがあって、「職級」や「年齢」に従って、給料が徐々に曲線を描きながら上昇していき、退職金なども、その中から一定額を積み立てられるようになっていた。

ところが、派遣社員などになると、まったく条件が違ってくる。通常、派遣社員は短期が前提となっているため、一般的に、時給は高めに設定されており、給料も定期的に昇級する仕組みにはなっていない。こうした、まったく違う給与システムを、すべてならして「同一賃金」にするのは無理がある。

このように、企業にとって「同一労働同一賃金」とは、一筋縄ではいかない問題である。だが企業は、何らかの形で、その大変さを受け入れる他に、道はないかもしれない。その際は、おそらく「代わりに正社員を解雇しやすくしてほしい」という条件を、バーター取引にするだろう。