日本的雇用システムの限界

実は、1995年頃より2015年までの20年間、日本の名目GDPは、終始500兆円のラインをいったりきたりしている。つまり、全然増えていない。それにもかかわらず、役員を除いた全体の雇用者数は、500万人以上増えている。

それは、女性の社会進出や、定年が延びたことによる、高齢者の雇用などによると思われるが、それだけ、企業が人を抱えているということである。要は、今の労働条件のままでは、企業は「これ以上、人を抱えることができない」のである。雇用については、すでにアメリカという先例があり、日本もいずれは「アメリカ化」する可能性が高い。

アメリカとは、自由と競争の国である。アメリカでは、まずは自由であることが優先されているため、解雇も辞職も容易になっている。そこに競争原理が働くため、格差も大きい。対する日本は、比較的セーフティーネットが整っており、保護主義に近いため、その分、変化が遅い。

これからの働き方

かつては、この「日本型」の雇用形態がうまく機能し、一時は日本を世界第2位の経済大国の地位にまで押し上げた。しかし、そのシステムもいまや完全に制度疲労を起こしている。

うまくいかなくなった以上は、変えるしかない。これが、日本の現状である。近い将来、正社員というは死語となり、仕事はプロジェクト単位で進むようになるだろう。それはちょうど1本の映画のようなイメージだ。持ち味を出してプロジェクトに貢献できる人は引く手数多になる。

「そういう社会になったら非正規雇用が増えるのではないか?」という声もある。しかし、35~54歳の非正規(女性は既婚者を除く)の数は2000年から増加の一途をたどり、今すでに273万人にも至る。すでに溢れているのだ。

優秀な人材を一社に縛ってその最大値を取りに行くよりも、複数の事業で活躍してもらうことで全体の雇用の受け皿も増やす。
そんなことを考えるべき時代の転換点にいるのかもしれない。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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