国債,円,赤字
(写真=PIXTA)

国は国債の元本を返済する資金が不足しているので借換債を発行する。借換債の発行が不可能になると国は債務不履行に陥る。国のファイナンスを一つの企業に例えるこのような表現はもっともらしく聞こえるが、これはミクロとマクロの誤解が含まれている。

国債発行と通貨の関係

国が国内において、自国通貨で発行する国債の元本を借換債を発行せず完全に返済すると、民間の国債保有が減少し、円貨は増加する。この円貨は、金融機関の預金を通して、日銀当座預金に還流する。この円貨で外貨を購入しても、海外が受け取った円貨は、金融機関を通して日銀当座預金に還流する。

ここで起こっていることは、国の国債の負債は減少し、日銀の当座預金の負債が増加している。政府の当座預金は減少しているので、増加した民間と合わせて、日銀のトータルな負債に変化はない。

管理通貨制度の下では、日銀は国の信用を背景に通貨を発行しているため、国と日銀はほとんど一体であり、両者を合計すればネットの負債にほとんど変化はない。民間の資産の国債が貨幣に変わるだけである。国債の元本を完全に返済するためだけに増税するのは、国民から徴収した税を、国債の資産を持つ民間にまた償還費として返すことになるため、民間の富の移動が起こるだけである。

このように、管理通貨制度の下では、発行した国債の元本を完全に返済し、国債の負債残高を減少させることにマクロの経済的な意味はほとんどない。

日本独自の「60年償還ルール」はグローバルスタンダードではない

2002年に格付け会社が日本国債を格下げした時、財務省は格付け会社に対する意見書で「日・米など、先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と主張しているが、国債がこのように貨幣と同じようなものなのであれば当然である。

しかし日本には、新規に発行した国債の元本は60年で完全に返済するという、独自のルールがある。他の先進国では、国債の発行は財政の負債の反対側に、民間の資産が発生する貨幣と同じようなものとみなされている。そのため、原則として元本は完全に返済されることはなく、継続的に借換えされて、政府の債務残高は維持される。完全に返済することがない他国は、言ってみれば「60世紀償還ルール」ということになり、それが普通である。

よって日本と違い、政府予算の国債費の中には基本的に償還費は計上されておらず、国債費=利払い費となっている。

日本は「60年償還ルール」という、他国にみられない特殊なルールがあるため、政府の債務は完全に返済しなければいけない、という誤解が生まれているようだ。「60年償還ルール」の60年が長すぎるという意見はよく聞くが、そのルール自体がグローバルに異質であることの指摘が、ほとんどみられないのは疑問だ。