Pepper

2014年6月5日、ソフトバンクの孫正義社長はロボット事業に参入すると表明しました。市場関係者の間では青天の霹靂と言ったニュースで、なぜソフトバンクが?という印象を持った方も多いのではないでしょうか。ロボットとひとえに言っても、軍事用ロボット、工場等で活躍する産業用ロボット、医療・介護で活躍するサービスロボット、玩具のロボットと様々ですがソフトバンクが参入する市場はサービスロボットのセグメントになります。ソフトバンクが世に送る「Pepper」は、ロボット自体が動いて何かをしてくれるというより、人間の声や仕草などを検出して適切なコミュニケーションが取れる「感情」を持ったロボットという事がセールスポイントです。

ロボット市場は少子高齢化、労働力不足と言った社会的な問題を背景に今後も確実に成長する市場と見込まれており、様々な企業が参入してきています。ソフトバンクと同じくIT企業であるGoogleもロボット事業参入を目指し2013年から2014年にかけて8社ものロボットベンチャー企業を買収して着々と準備を進めているようです。

この様にロボット市場はかなり過熱気味になりつつありますが、これにより恩恵を受ける業界を考えてみましょう。ロボットは人間の様な形をして豊かな動きを見せてくれますが、この動力源は全てモーターによるものです。ロボットの販売価格(Pepperの場合)が20万円前後とすると、安価で信頼性の高いモーターを安定的に供給できるモーターメーカーが強みを発揮すると思われます。具体的にはマブチモーター< 6592 >、日本電産コパル電子< 6883 >,ミネベア< 6479 >等のメーカーが挙げられます。またモーターを制御する為の周辺機器(減速機、エンコーダ、ブレーキ)メーカーもモーターとセットで使用されるコンポーネントですのでこの業界も恩恵を受けるでしょう。

逆にロボット市場が成長する事により追い込まれる業界も出てきます、それは「人材派遣業界」です。これまで企業は景気の変動に対して派遣社員を活用して固定費を抑制してきました。今後ロボットの知能が高度化するにつれ、誰にでもできる様な定型業務はロボットに置き換える企業が増えてくると考えられます。ダニエル・ピンク著のベストセラー『 ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代(三笠書房) 』にある、『ハイ・コンセプト(芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力 等)』といった、人間にしかない能力がますます重要になると考えられます。 付加価値の低い業務はロボット等により自動化が進み、人間はより付加価値の高い業務のみに従事する事になるでしょう。ロボットがロボットを作ると言う映画の様な事も近い将来に現実味を帯びてくるかも知れません。

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