書店に寄ると、一角に「意外に知らない節税対策」という特集コーナーが目に入る。特に年末調整や確定申告期、中小企業の決算が多い夏場になると、その傾向が顕著になる。実際に「払わなくてもいい税金を支払っている」ケースは多い。今回は、知らずに損をすることがないように、意外に知らない節税対策を確認していきたい。

目次

  1. 節税対策とは
  2. サラリーマンは節税対象を見落としがち
    1. <給与所得控除の速算表(平成28年分)>
    2. <給与所得控除の速算表(平成29年分)>
    3. <給与所得控除の速算表(平成25〜27年分)>
  3. 個人事業主の節税対策
  4. 企業の節税対策

節税対策とは

よく誤解されるが、法律的に認められていない「脱税」と「節税」はまったくの別物であり、法律に抵触する方法は節税対策とはいえない。収入節税対策とは、主に所得税を納める際に、さまざまな所得控除や非課税措置を活用して、納付する税金額を抑えることをいう。

本来所得税は、1月から12月までに得た「所得(売上-経費)」に対して課税される。この原則を順守しながら、合法的に認められた方法を使って、最終的に納める所得税額を抑えることを節税対策という。

サラリーマンと個人事業主や法人の経営者では、収入の得る方法も違えば節税の方法も違うことが多々ある。それぞれの立場によって異なるものと、共通する節税対策をご紹介しよう。

サラリーマンは節税対象を見落としがち

サラリーマンの具体的な節税対策を確認していく。サラリーマンの収入は、すべてが所得税の課税対象ではない。所得税の考え方は収入から「収入を得るために必要となったさまざまな費用」を差し引き、残額が課税対象となる。

ただ、サラリーマンの所得である「給与」を得るためのスーツ費用や靴費用などを計上することは難しい。まずは、すべてのサラリーマンに対して、最低65万円が差し引かれる。これを「給与所得控除」という。

<給与所得控除の速算表(平成28年分)>

給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%、65万円に満たない場合は65万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超1200万円以下 収入金額×5%+170万円
1200万円超 230万円(上限)

<給与所得控除の速算表(平成29年分)>

給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%、65万円に満たない場合は65万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超 220万円(上限)

<給与所得控除の速算表(平成25〜27年分)>

給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%、65万円に満たない場合は65万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超1500万円以下 収入金額×5%+170万円
1500万円超 245万円(上限)

以前はスーツ代などの計上は給与所得控除に含まれていたが、2013年から以下の費用は「特定支出控除」として個別の計上が認められている。この特定支出控除を知らず、可能な節税対策を見逃している人が多いので、注意したい。

通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費などだ。

この他にも、生命保険料を控除する生命保険料控除、所定の条件のもとで適用できる住宅ローン控除、最近注目されている「ふるさと納税(寄付控除)」などがある。

サラリーマンは、年末に勤務先で「年末調整」をすることで税金還付が可能となるが、住宅ローン控除などは年末調整の対象外となるため、サラリーマン自身が確定申告を行う必要がある。

なお、自分で支払った国民年金保険料は「社会保険料控除」として節税対策とすることができる。最近は厚生年金のほか、自身で投資運用をする確定拠出年金(日本版401k)を活用するサラリーマンも増えているため、留意するようにしたい。なお、確定拠出年金の場合は、「小規模企業共済掛金控除」という、国民年金保険料とは異なる所得控除の対象となる。

個人事業主の節税対策

個人事業主の場合は、サラリーマンと異なり費用となる項目を正確に計上して費用とすることが可能だ。この費用を「経費」という。経費となる領収書やレシートは1年間保管して、税金納付(還付の場合もある)をする確定申告で収入額とともに計上する。

また、個人事業主もサラリーマンと同様、生命保険料控除などの所得控除を活用することができる。個人事業主は給与所得控除の対象外となるため、適用できる節税対策をしっかりと確認し、確定申告時に申請するようにしたいところだ。

企業の節税対策

企業の節税対策では、「損金」という言葉を理解することが大切になる。損金は個人事業主でいうところの「経費」と同様のものだが、交際費は年800万円のみ損金に計上できるなどの違いがある。中小企業の場合、会計の実態は個人事業主と変わらない場合も多いが、節税対策における法律などの環境は個人事業主と異なるので注意したい。

今回は、意外に知らない節税対策をついてお伝えしてきた。「節税対策は何となく面倒だ」という声を聞くことも多いが、事業主はもちろん、サラリーマンも有効な節税対策次第で手元にお金を残すことができるということは注目に値するだろう。最近はインターネットで最新の節税対策がまとめられているものも多いため、しっかりと活用したいところだ。

工藤 崇 FP事務所MYS(マイス)代表
1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経てFP事務所MYS(マイス)設立、代表に就任。WEBコラムを中心とした執筆活動、個人コンサルを幅広く手掛ける。ファイナンシャルプランナー(AFP)。