(写真=PIXTA)
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「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」が発表され、「結婚できない」人が多い理由は「経済面」である反面、「結婚しない」一番大きな理由は「一人が楽だら」であることが分かった。

本調査は国立青少年教育振興機構が行ったもので、11月1日に発表された。対象は全国の20代・30代の男女4000人で、インターネットを使って2015年12月に行われた。

小学生までの体験で今の結婚観が変わる

今の結婚観は何時頃までに形成されるのだろう。今回の調査結果では、もっとも影響がある時期の1つとして「小学生まで」があげられた。性格が幼少期に作られるといった学説は有名なもので、それを裏付けるような結果だと言えよう。

調査結果を読み解くと、小学生までの体験が多い人ほど結婚願望、子ども願望が強いのだという。体験とは具体的にいうと「友達・同級生とよく遊んだ」「家族行事や地域行事に沢山参加した」などだ。積極的に人と関わりを持った人ほど結婚・子ども願望が強くなっていることが分かる。

これは他人と遊ぶこと、他人と一緒にいることが楽しいことを小さい頃に学んでいるからだろう。人と関わることが好きな人は、自然と結婚したいという思いを持つようになると考えられる。

思春期の異性間コミュニケーションも影響する

中高生の時期も、今の結婚観を作る上で重要な時期と言えるようだ。この頃になると人付き合いよりも、より重要になるのが「異性」の存在である。異性に対してどのような感情を抱いたかによって、将来の結婚観が左右されるのだ。

具体的には中高生の頃に異性に対して「面倒な存在」だと認識する人ほど、結婚したいという思いが遠ざかる。小学生の頃では、性別に強い意識を持つことは少ない。それを意識し始めるのは思春期が訪れてからだ。

ある意味ここで「男性とは」「女性とは」といった固定観念が生まれるのであろう。結果として、「異性=面倒」と認識されれば、その後の人生でも「異性=面倒」と認識され続けると考えられる。

男女で結婚・子ども観の変化の仕方が異なる

過去と今のデータを見比べると、男女で結婚・子ども観の変化の仕方が違う。男性はとにかく「結婚したくない」と思う人が増えた。これは社会の変化とともに女性に対して嫌な思いをする人が増えたからかもしれない。

女性の場合は「結婚したくない」人が増え、かつ「早く結婚したい」人も増えている。より一人の人として生きていきたいと考える人と、家庭を持ちたいと考える人が増えたと言えるだろう。

子ども観についてみてみると、子どもを欲しいと思う男性が減っている。男性の間で、子育てが大変なことだという認識が広まっていると考えられる。

女性は「すぐに欲しい」人、「欲しくない」人の両方の割合が高まった。ビジネスパーソンとして、女性が活躍できるチャンス等が影響していると考えられるだろう。

未結婚の理由はできないから?したくないから?

調査結果によれば、結婚しない理由は「できない」「したくない」の両方だ。どちらかではなく、2つの理由からいまだに結婚しないでいる。

結婚できないでいる理由は「経済面」がもっとも影響を与えている。ワークスタイルが多様化している一方で、安定的な収入が得られない人が増えた。結婚や子どもにはお金が必要なため、経済的に結婚できずにいる。

結婚したくない理由のトップは「一人が楽」だからである。パートナーと一緒にいるよりも、自分一人で過ごすほうが楽だと言うのだ。こうした人は結婚したくない上に、子どもも欲しくないと回答している。

子どもの存在とは?家族の存在とは?

結婚・子ども観に影響を与えるものとして、「子どもの存在とは?」がある。哲学的ではあるが、非常に重要な要素となっていることが調査結果から分かる。

子どもの存在は大きく2つある。「生きがい」か「継続」かだ。生きがいとは、その文字の通り「なぜあなたが生きるのか?」という問いの答えだろう。子どもがいるから、家族があるから生きるのだ。こうした人は結婚したい、子どもを作りたいと考えやすい。

継続とは「子どもに何を託すのか?」という問いの答えといえる。子どもに老後の面倒を見てもらうような社会保障的な役割や、財産を守ってもらう後見人的な役割を求めるものが該当する。こうしたただ役割だけを求める場合には、代替手段があるため結婚しなくてもいい、子どもを作らなくてもいいと考えるようだ。

人付き合いのよさが結婚・子ども観に影響する

大人になってからの人付き合いのよさも肝心だ。積極的に近所の人、社会の人と関わりを持とうとする人ほど、結婚・子ども観が強い。これは身の周りには実際に結婚して幸せになっている人も多いからだろう。こうした人はとにかく他人と関わるのが好きなのだ。

普段からあまり人と関わらない人は、結婚・子ども観が弱い。こうした近所づきあい、社会づきあいは子どもの頃の体験が大きく相関関係があると言えるだろう。

「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」をまとめると、男性では総じて結婚したくない人が増えている。女性の場合は結婚したくない人、早く結婚したい人が二極化した。

ここで良い・悪いを論じるつもりはない。ただ、この調査結果を受けた上で、企業にせよ行政府・官公庁にせよ、対応する必要があるだろう。(吉田昌弘、フリーライター)