なぜ貯蓄できないのか

一人暮らしの約半数が貯蓄をしていないことがわかったが、ではなぜ、そのような事態になっているのか。先ほどのデータで、20代は貯蓄していない人の割合が突出して多かったが、一般的には、まだ所得があまり多くない時期である。それに加え、就職と同時に自活を始めた場合、生活環境を整えるために家具や家電を購入するなど、給料の大半を使ってしまうことも考えられる。スーツなど、仕事のために買い揃えるものも多いだろう。さらに、自分も周りも独身のうちは、交際費にお金が消えてしまうこともある。

また、これは全世代に共通して言えることだが、一人暮らしだと基本的には好きにお金が使える。家族がいれば毎日コンビニ弁当や外食……ということもなかなかできないが、一人なら文句を言う人もいない。自分だけのためにわざわざ自炊をするのは面倒、となれば、お金で解決してしまうことが増えるだろう。趣味などにお金を使える自由さも手伝い、いざ困ることになるまでは、貯蓄をしなくても平気だと高を括ってしまいがちだ。

もちろん、一人暮らしだと、夫婦共働きなど複数の働き手がいる世帯に比べて、収入が少なくこともある。そうなれば、貯蓄は難しいと判断してしまう人もいる。しかし、一人暮らしの約5割の人が貯蓄できない要因は、そこにこそあるのではないだろうか。つまり、「一人暮らしだから貯蓄ができない」とはなから決めつけてしまっている可能性がある。はじめから貯蓄はできない前提でお金を使ってしまえば、当然お金は貯まらない。

一人暮らしでもしっかり貯める人はいる

反対に、一人暮らしであっても、きちんと貯蓄をしている人もいる。先ほどの調査で、貯蓄をしている人の貯蓄額の平均と中央値を見てみよう。ちなみに、中央値とはデータを小さい順または大きい順に並べた時、ちょうど真ん中にくる数値のことであり、より現状に即していると言える。

・20代…平均379万円、中央値180万円
・30代…平均825万円、中央値500万円
・40代…平均1646万円、中央値620万円
・50代…平均1941万円、中央値965万円
・60代…平均2494万円、中央値1200万円

全く貯蓄ができない人がいる一方で、着実に貯蓄をしている人もいる。さらに、貯蓄をしている人を年収別に見てみると、一人暮らしでもかなり貯蓄をしていることがわかる。

・300万円未満…平均1142万円、中央値350万円
・300~500万円未満…平均1266万円、中央値514万円
・500~750万円未満…平均2007万円、中央値1135万円
・750~1000万円未満…平均3455万円、中央値2000万円
・1000~1200万円未満…平均8402万円、中央値6400万円

年代を分けていないため、貯蓄の期間はバラバラだが、たとえば年収300万円未満であっても、中央値で350万円もの貯蓄がある。全く貯蓄をしない人がいる一方で、一人暮らしだからこそ将来に備える必要性を感じ、しっかり貯めている人も多い。要するに、意識次第でこれまで貯蓄ゼロだった人も、貯蓄をすることは充分可能ということだ。

毎月確実に貯蓄するためには

では実際に、貯蓄をするためにはどうすればいいのか。最も効果的なのは、「先取り貯蓄」だ。先取り貯蓄とは、給料から一定額を天引きさせ、貯蓄に回すこと。勤め先に財形貯蓄制度がある場合は、積極的に活用してみよう。ない場合は、自動積立貯金で毎月確実に貯蓄していこう。先に生活費などに使ってしまい、「余ったら貯めればいい」と考える人もいるが、これでは貯蓄はできない。意志の力ではなく、貯蓄せざるを得ない仕組みを取り入れることが重要だ。

これまで貯蓄をしなかった人が急に多くを貯蓄してしまうと長続きしないため、まずは無理のない範囲で始め、様子を見て金額を増やしていこう。毎月着実にお金が貯まっていくと、固定費を見直してみよう、無駄使いを減らそうという意識も起きてくるだろう。一人暮らしだからこそ、自分の心がけ次第でコントロールもしやすい。ぜひ今からでも取り組んでみよう。

武藤 貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーや執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。 FP Cafe 登録FP。

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