「米国を再び偉大にする」というスローガンを掲げたトランプ氏は、現状に不満を抱く有権者から支持を得て大統領選を制した。トランプ氏の所属する共和党が政権を奪還するのは、オバマ氏の前、ブッシュ政権以来8年ぶりということになる。共和党はどんな政党なのか、おさらいしておこう。

共和と民主 政治的スタンスの違い

共和党はいわゆる保守政党で、支持層は白人、富裕層、経営者、大企業従業員に多いとされ、1854年に黒人奴隷制度廃止を掲げて結党されている。銃規制は反対(全米ライフル協会がトランプ氏支持)、人工妊娠中絶は禁止、家族制度を重視する。死刑制度は存続、不法移民は反対だ。トランプ氏は就任後に態度を軟化させているが、基本的には同性婚には反対する立場だ。

一方の民主党はいわゆるリベラル。国民全員の生活水準を向上させる事をめざす。人工妊娠中絶は容認、同性婚も同様。死刑制度は廃止、不法移民は容認する立場だ。支持者としては黒人、ヒスパニック(中南米系)、貧困層が多いとされている。1828年結党しており、共和党よりも歴史が古い。

共和党 小さな政府、積極外交

2大政党を比較するとき、共和党は「小さな政府」という言葉とともに語られることが多い。これは、「政府は最低限のことだけをし、あとは民間に任せよ」ということだ。公的なサービスを少なくして税金も安くしようとする考え方だ。リーマンブラザーズが破たん寸前だった時も、ブッシュ元大統領は公的資金による支援を拒否している。

世界で強いリーダーシップを発揮しようとする積極外交が共和党だとも言える。イラク戦争、イスラム国への対応、積極的に軍隊を動かす、こういった行動が世界の秩序を保っている側面は否定できない。

とはいえトランプ氏は世界への影響力よりも内政に重点を置いている点が特徴的といえる。かつては「世界の警察」といわれた米国(軍)の活動が今後どうなるかは注目される。

民主党 オバマケアめざすも完遂せずトランプ氏継承か?

一方の民主党を「大きな政府」ととらえると、これは税金も高くなるが高福祉でもあるという考え方だ。オバマ大統領は、皆保険制度の実現に取り組んできた(オバマケアと呼ばれる)。米国では医療保険への加入は自由だが保険料は高額だ。所得の低い貧しい人は加入できず、満足な治療が受けられないからだ。予算がかかるため結局は完遂しないままオバマ氏は任期を終えることになるが、トランプ氏が一部を引き継ぐ考えを示している。」

外交面で民主党は、共和党に比べれば外交に消極的だと言える。オバマ大統領が「世界の警察をやめる」と発言したことは民主党の意見を象徴しているとも言えるだろう。

見事に揺れ動いている政権

ここ10人の大統領をみると、見事なまでに5対5と2大政党が分け合っている。

1961年(第35代、1期) ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ 民主
1963年(第36代、1期) リンドン・ベインズ・ジョンソン 民主
1969年(第37代、2期) リチャード・ミルハウス・ニクソン 共和
1974年(第38代、1期) ジェラルド・ルドルフ・フォード・ジュニア 共和
1977年(第39代、1期) ジェームス・アール・カーター・ジュニア 民主
1981年(第40代、2期) ロナルド・ウィルソン・レーガン 共和
1989年(第41代、1期) ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ 共和
1993年(第42代、2期) ウィリアム・ジェファソン・クリントン 民主
2001年(第43代、2期) ジョージ・ウォーカー・ブッシュ 共和
2009年(第44代、2期) バラク・フセイン・オバマ・ジュニア 民主
(ケネディは任期途中で暗殺、リンドン・ジョンソンが昇格、その後1期務めた。ニクソンは2期目の途中で辞任、以上敬称略)

現実的にはどちらの政権であるにしろ、中道的な政策になることが多く--それが政治なのだろうが――こうしてバランスを取っているのかもしれない。(ZUU online 編集部)