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(写真=PIXTA)

お金持ちの都道府県はどこかと聞かれて、まず思い浮かべるのは東京都などの大都市ではないでしょうか。確かに、日本経済の中心としてヒトも企業も集中し、たくさんお金を持っているイメージがあります。

「貯める力」NO.1は福井県

不動産や株式、預貯金などを多く保有する資産家のことを「お金持ち」と呼ぶように、貯蓄残高が多い人も「お金持ち」といえます。たしかに、今の貯蓄が多ければ、しばらくはお金持ちでいられます。しかし、預貯金などは使い続けるうちに、いつかなくなってしまうものです。これからの時代、貯蓄残高の目減りを抑え、いざという時にも困らないように貯蓄を増やす力が求められます。では、実際に得た収入からどれだけ貯蓄できるのかという「貯める力」に地域による違いはあるのでしょうか。

「貯める力」を示すデータの一つとして、5年に1度行われる総務省の「全国消費実態調査(平成26年)」に「平均貯蓄率」という項目があります。「平均貯蓄率」は、実収入から税金や社会保険料などを差し引いた可処分所得に対する貯蓄純増※の割合を示しています。
※貯蓄純増:「(預貯金-預貯金引出)+(保険料-保険金)」

2人以上の勤労者世帯※での「平均貯蓄率」上位の都道府県
※2人以上の勤労者世帯:世帯主が会社、公官庁、学校、工場、商店などに勤めている世帯

1位:福井県(21.7%)
2位:山梨県(20.1%)
3位:鳥取県(19.1%)
4位:富山県(19.0%)
5位:秋田県(17.3%)

1位の福井県は、全国平均10.7%の約2倍となっています。

「貯める力」が貯蓄残高を増やす

一方、「お金持ち度」を表すデータの一つとして、同調査での「貯蓄現在高」上位をみてみましょう。今度は、預貯金に加え、株式や債券、投資信託などの有価証券や生命保険などもカウントされます。

2人以上の勤労者世帯での「貯蓄現在高」上位の都道府県

1位:福井県(約1,601万円)
2位:香川県(約1,438万円)
3位:愛知県(約1,420万円)
4位:東京都(約1,413万円)
5位:富山県(約1,413万円)

※公表資料の数字を万円単位に四捨五入しています。

こちらでは、東京都や愛知県といった大都市圏も上位に入ってきています。

興味深いのは、福井県が「平均貯蓄率」ばかりでなく「貯蓄現在高」でもトップであることです。同様に、富山県も両データで上位にあります。

お金を貯める力が強い要因としてはどのようなことが考えられるでしょうか。

総務省の「平成24年就業構造基本調査」によると、夫婦共働き世帯の割合(共働き率)の全国平均は45.4%ですが、前出の「平均貯蓄率」上位の都道府県のうち秋田県を除く4県は「共稼ぎ率」でも高い方から10位までに入っています。また、福井県が共働き率58.8%でこちらでも1位となっています。「貯める力」が強いところでは、共働きで稼いだ分をしっかりと貯蓄に回していることがうかがえます。

世帯の構成も考慮する必要がありそうです。共働きだと家事や育児と仕事を両立させる負担も重くなりがちですが、2010年(平成22年)の国勢調査によりますと、3世代が同居している世帯の割合が最も高いのは山形県で21.5%、2位以降は福井県(17.6%)、秋田県(16.4%)、新潟県(16.4%)、富山県(16.1%)と続いており、貯蓄率上位の福井県、富山県、秋田県が再び登場します。日本列島は気候・風土もさまざまで地方によって文化や生活習慣が異なるため一概に結論づけることはできませんが、祖父母と孫が同居して家事や育児を分担しながら共働きを支えることが貯蓄率の高さに反映されているとみることもできそうです。

「貯める力」は持ち家率とも関係あり⁉

では、家計においては財産である「持ち家」の保有率が高いのはどこでしょうか。総務省「平成25年住宅・土地統計調査」によると、持ち家率が最も高いのは富山県で79.4%、2位以降は秋田県(78.1%)、3位山形県(76.7%)、4位福井県(76.5%)、5位新潟県(75.5%)と続きます。

こちらでも、貯蓄率上位の富山県、秋田県、福井県の名前が見え、一定の共通した地域特性がうかがえます。

持ち家があれば、住宅ローンを抱えている場合もありますし、固定資産税や修繕費といった維持費もかかりますが、そのようななかで「貯める力」を維持する堅実さがうかがえます。

こうしてみると、貯蓄率上位の地域では持ち家や親世帯との同居といった環境も生かしながら、しっかりと働き、貯めている様子がうかがえます。大都市では仕事口は多いかもしれませんが、核家族化や待機児童の問題で共働きを続けづらかったり、さまざまな出費も多かったりするために貯蓄に回しづらい環境になっているという実情が浮かびあがってきます。(提供: お金のキャンパス

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