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(写真=PIXTA)

政府は日本酒とワインの税額を7年後に統一する案をまとめ、与党や酒類メーカーと調整に入った。ビールなどの酒税の見直しに合わせて、日本酒、ワイン、チューハイなどについても製造方法が同じ醸造酒に区分されていることから、税率を段階的に一本化する案をまとめたのである。

いまは350ミリリットルあたり日本酒で42円、ワインで28円の税額を2020年10月と23年10月の2段階で35円に一本化する。現在の税額が28円のチューハイやハイボールは、26年10月に日本酒やワインと同じ35円に増税する。

税率一本化に数年かけるのは、ビール類の価格が急変することで個人消費が腰折れしないようにすることや、メーカーの商品開発の見通しを立てやすくすることが念頭にあるためである。

お酒には、酒税という税金がかかっている。われわれ消費者になじみのある消費税は、値札やレシートで目に見えるが、酒税を一般の消費者が意識する機会はほぼない。

酒税は酒造メーカーが納税している。つまり消費者が目にすることはない税金であるが、商品価格にしっかり上乗せされているのである。店先にお酒が並ぶときは、酒税が商品価格に組み込まれているので、実際に酒税を負担するのは消費者であるといえる点では消費税となんら変わらない。

その酒税がまた増税されるのである。消費者にも痛手であるが、実は酒店が一番に痛手である。

実はビールが高級酒?

税金の面で見るとビールは、日本酒(清酒)と比べると、5.5倍も高いのである。そのためビール製造各社が、発泡酒や「第三のビール」の商品開発を進めたという経緯がある。味を工夫しながら税率を引き下げて、商品価格も引き下げビールに含まれるアルコール分は、約5度である。

実際に、どれぐらいの酒税を負担しているかを考えてみる。酒税の割合をビール1缶(350ミリリットル)で見ると、酒税は77円である。これに消費税が上乗せされるので、販売価格から見るとビールの4割は税金である。

他のお酒の税金は?

日本酒はというと、350ミリリットルあたり42円である。ビールより税金は46%ほど安くなる。これは、酒税が1キロリットルあたり、ビール22万円、日本酒12万円と重量制であるためである。他の種類のお酒の金額を挙げると、第三のビールやワインなどの果実酒は、8万円である。

それに対してウイスキーなどは37万円である。ウイスキーが高級酒といわれる理由もここにある。

酒税は重量制であることを考慮すると、やはり高いお酒のほうが酒税の負担率は下がるということだ。

酒税法では、酒類の製法や性状に着目して、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の4種類に分類し、その分類ごとに異なる税率を適用することを基本としている。

また4種類に分類された酒類は、さらに17品目の酒類に区分されている。発泡性酒類は、ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(ビール及び発泡酒以外の酒類のうちアルコール分が10度未満で発泡性を有するもの)である。

醸造酒類は、清酒、果実酒、その他の醸造酒である。蒸留酒類は、連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツである。混成酒類は、合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒である。17品目の種類の区分に興味がある人は、酒税法第2条、第3条をみてみるといいだろう。

酒税は昔、国税収入の1位を占めていた

酒税の国税収入はどうなっているのだろうか。

1899年、実は酒税は国税収入の1位を占めていた。1935年の所得税に抜かれるまで30年以上にわたって税収1位の地位を保持し続けていたのである。1902年には、酒税だけで全ての国税収入の42%を占めたこともあったのである。

しかし、現在は年々減少傾向である。税収の額で見ると、1988年22,021億円がピークで1996年20,707億円となり、それ以降毎年減少し2014年13,410億円となっているのである。目立たない酒税という税金の歴史は、実はこのように大きく変化しているのである。

海外旅行に行ったら、「関税」「酒税」「消費税」がかからない免税範囲までを購入するといいだろう。タバコと同様、これらの税金がとられないだけでも、今後はお得な買い物のお土産になるのではないだろうか。

眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表)
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