必要経費を前払いとするか受取預金からの控除とするかで折り合いがつかずジ・エンド

(数日後)
□自称弁護士→ ○筆者:
昨日、銀行に訪問してきた。当職の訪問はまさに時宜を得たものであった。銀行は貴殿の預金を、まさに相続人不明の預金として処理をしようとしていたところであった。当職が訪問し交渉した結果、その処理を止めることができた。ついては受取手続を進めることにしたい。預金受取にはドバイ高等裁判所での正式な宣誓書が必要となる。手数料として9800米ドル必要。そのほかに、コンサルティング費用として4070米ドル、管理費用として6110米ドル必要。当職の銀行口座を指定するので送金して欲しい。

○筆者→ □自称弁護士:
必要経費の金額は了解。ただし、前払いではなく、受領した預金から差し引いて支払うこととしたい。

(翌日)
□自称弁護士→ ○筆者:
先に送金して欲しい。

○筆者→ □自称弁護士:
海外送金の方法に慣れていない。受取預金からの控除で是非お願いしたい。

(翌日)
□自称弁護士→ ○筆者:
事後に受け取る金銭から差し引いて手数料を受領することは法律で禁止されている。

○筆者→ □自称弁護士: 当方は日本国の弁護士である。しかし、ドバイの法律には詳しくないから、ドバイのどの法律のどの条文に書いているのか教えて欲しい。

(翌日)
□自称弁護士→ ○筆者: (法律のことには一切触れずに、)手続に必要な経費であり前払いに理解頂きたい。2670万米ドルもの大金を受け取るチャンスを逃さないようにされたい。
(このようなやりとりを何度も続けたが議論が行ったり来たりするだけで折り合いが付かず、ジ・エンド)

段々と「もしかしたら本当の話かもしれない」という気に……

上記やりとりからわかるように、ポイントは、手続費用が必要という話を後から持ち出すことによって、支払うという気を起こしやすくすることのようだ。

確かに最初は誰もが疑ってかかるから、手続費用が必要という話を初めに出されるとすぐにお断りということになっていただろう。しかし、数日間にまたがって、何度も何度も、具体的な内容の、迫真に満ちたメールのやりとりをしていると、段々と、この話はもしかしたら本当の話かもしれないという気がしてきた。その後に手続費用の話をされると、うっかり話を信じてしまうのも納得だ。

また、手続費用の金額を、項目ごとに細かく要求し、しかもキリのいい数字とはしないことで、さもありなんと思わせるところが実に巧妙だ。

オレオレ詐欺は自分には関係ない、そんなのに引っ掛かるとはありえない。などとこれまで軽信していたが、筆者は初めて身近な話として感じた。

おいしいメールと国際詐欺に注意を

外務省のホームページを見ると、国際詐欺として有名な事件として、ナイジェリアの「419事件」というものがあるようだ。口座名義の謝礼を払うという話で釣る詐欺事件だ。ほかにも、サッチャー元首相の遺産の一部を相続することができる、アンゴラ反乱軍の亡きリーダーの遺産が政府に没収されないよう協力して欲しい、タリバンに対する秘密作戦遂行中に発見した麻薬絡みの現金をあなたの銀行口座を借りて安全に保管させて欲しい、などといった話で釣る事件があるようだ。筆者の体験したものも、この類の詐欺話であろう。

うかうか話に乗ると、手続費用など経費が必要であるとして送金を求められる。そしてお金を払い込んだが最後、その後は音信不通となる。

世の中、そんなにおいしい“棚からぼた餅”みたいな話があるはずがない。仮に真実だと思ったとしても、外務省に問い合わせたり、弁護士など専門家に相談したりするようにされたい。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

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