結婚すると、人生を共にするパートナーとの長い生活が始まる。結婚するメリットは多いが、何といっても2人で人生を歩んでいくことの喜びと頼もしさを感じることができることが大きい。結婚は、そうした精神的な支えという意味でのメリットばかりか、実は税金などの面から、金銭的にもメリットが多いのだ。
ここでは、結婚にまつわる税金についての話をしていこう。
目次
結婚と税金の関係
税務優遇措置として「配偶者控除」「配偶者特別控除」というものがある。これから結婚をする人は、節税のために必ず知っておきたい内容だ。配偶者控除とは、配偶者がいる人が税制上の控除を受けられるもので、控除額は最大で38万円だ。
配偶者控除の対象は、民法739条が規定する配偶者のみ。つまり、事実婚や内縁関係の場合には、配偶者控除を受けることはできない。加えて、以下の3つが要件となる。
・納税者と生計を一にしている。
・配偶者の年間合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は、給与収入が103万円以下)。
・青色申告者の事業専従者(青色申告納税者が経営する会社で勤務しているもの)として、その年に一度も給与の支払いを受けていないか、または白色申告者の事業専従者でない。
配偶者特別控除は、38万円を超える所得があり、配偶者控除の適用を受けられない場合に、配偶者の所得に応じて一定額の控除を受けることができるものだ。配偶者控除の要件に加え、控除を受ける人のその年の合計所得金額が1000万円以下、他の扶養親族となっていない、年間の合計所得金額が38万円以上76万円未満という条件がある。
共働き、専業主婦(夫)、独身にかかる税金の違い
共働きの場合と専業主婦(夫)の場合とでは、税金に差が生じる。それぞれ、独身の場合と比較しながら見ていこう。
共働き家庭の場合
どちらも会社に属し共働きをする場合には、配偶者の所得金額が鍵となる。配偶者控除は所得が38万円以下、配偶者特別控除は76万円未満が条件となるため、それらの金額を超えている場合には控除を受けることができない。加えて、それぞれの会社から支払われる給与から源泉徴収により各種税金、社会保険料、厚生年金などが引かれることになる。つまり、働き方によっては独身時代と変わらない税金が引かれ続けることになる。もちろん、共働きの家庭の場合は世帯年収が多くなるので、その分、納税額も増える。
専業主婦(夫)となった場合
どちらかが専業主婦(夫)となり、相手の扶養に入った場合はどうだろうか。つまりこの場合、扶養する側は、独身時代と年収は変わらないが、前述した配偶者控除の適用を受けることができるため、手取り金額は増加するのだ。
結婚と確定申告の関係(退職した場合)
結婚をして退職した場合、つまり専業主婦(夫)となった際には確定申告が必要となる。1年の途中で退職すると、勤務先での年末調整が行われないことになる。会社に勤務をしていた際に給与から各種税金が天引き(源泉徴収)されるが、その税額は予測される年収に対し課税され、年末調整によって納税額が決定されるのだ。そのまま確定申告をしなければ、過剰な税金を支払っている可能性があるということになる。
確定申告には「確定申告書」「源泉徴収票」に加え、退職金を受け取った場合には「退職所得の源泉徴収票」が必要となる。また、生命保険料控除や国民年金保険料など該当する控除項目がある場合には、その内容を証明する書類を用意しておこう。
毎年、2月16日から3月15日までが確定申告期間となっている。書類をそろえ、居住地を管轄する税務署に提出することで確定申告が完了する。
2017年度税制改正による配偶者控除見直し
「103万円の壁」という言葉がある。これは、先に紹介した配偶者控除を受けるための所得ラインだ。しかしこれについて、最近動きがあった。
現行の103万円以下の要件を、2018年1月より150万円以下に引き上げることが決定したのだ。それに加え、世帯の手取り収入が大きく減らないよう、150万円を超えた場合でも最大38万円の控除を受けることができるようになる。150万円以下、155万円以下、160万円以下、167万円以下、175万円以下、183万円以下、190万円以下、197万円以下、201万円以下と9段階で控除額は変わり、201万円を超えた場合には適用されない。これにより、今まで制限されていた配偶者の働き方を見直すきっかけになるだろう。
世帯年収を最大化する
ここまで、結婚した際の税金について解説してきた。現行の制度では、納税額だけを見ると共働きの場合の負担が大きい。しかし、世帯全体での収入は共働きが有利なことは言うまでもない。共働きをして収入を増やすのか、働かない道を選び節税をするのかは、各家庭のライフプランにより異なるだろう。
先の税制改正により、夫婦の働き方が大きく変化することが予想される。共働きでも損をしないよう、考慮された内容だ。こうしたニュースにもアンテナを張り、これを機に世帯の年収を最大化できる方法を考えてみてはどうだろうか。