三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2011年2月に報告した「我が国におけるキャッシュレス社会の今後の進展に関する調査分析」によると、2008年時点における日本の個人の支払いにおける各決済手段を用いた利用金額の総額を100とした場合の構成比を見てみると、クレジットカードは15.0%であるのに対し、デビットカードはわずか0.3%であった。
クレジットカード社会ともいわれるアメリカでの個人支払いにおけるクレジットカードの利用総額も26.8%でデビットカードは16.8%、イギリスではクレジットカードが10.6%でデビットカードが27.2%であることを考えると、日本においても徐々にデビットカードが普及するのかもしれない。
世界的にはクレジットカードと同程度、国によってはクレジットカード以上に活用されているデビットカードとは何なのか、クレジットカードやプリペイドカードとの違いは何なのか、デビットカードにはどのような種類があるのか、デビットカードはどのように申し込むことができるのかなどについて紹介する。
目次
デビットカードとは一体何なのか
デビットカードとは、銀行口座に直結したカードのことである。使い方はクレジットカードと同様で、サービスや商品の代金をカードと暗証番号で支払うことができる。使える場所も同じで、例えばVISAデビットカードであれば、VISAのマークが表示された加盟店で利用することができる(一部、デビットカードは利用できない店舗もある)。
しかし、クレジットカードは基本的に翌月以降の後払いであるのに対し、デビットカードは直結する銀行口座から即時の支払いとなる。クレジットカードの場合は、銀行口座にサービスや商品の代金に充当する残高がなくても支払い日までに口座に入金すれば問題なく利用できるが、デビットカードは即時払いであるため、銀行口座に支払う金額分の残高がないと利用できない。
クレジットカードやプリペイドカード、キャッシュカードとの違いを解説
では、デビットカードはほかのカードと何が異なるのだろうか。
クレジットカードとの違い
前述のとおり、クレジットカードは後払いであるが、デビットカードは即時払いだ。また、クレジットカードは支払い方法として一括払いや分割払い、リボ払い、ボーナス月払いなどを選択できるが、デビットカードは一括払いのみであることも異なる点といえるだろう。
クレジットカードは一時的に資金を借りることになるため審査が必要であるが、デビットカードは銀行口座さえ持っていれば基本的には審査を受けることなく発行できる点も異なる。審査が必要ない分、カードによっては15歳や16歳といった未成年でも持つことができる。クレジットカードでも未成年が持てるものもあるが、基本的には20歳以上と限定されることが多い。
プリペイドカードとの違い
プリペイドカードはカードに入金されている分しか利用することができない。カード残高が少なくなるとチャージをする必要があり、常に残高を気にしなくてはならないのはプリペイドカードならではのデメリットである。
また、プリペイドカードには限度額が設定されており、いくらでも入金しておけるわけではない。そのため、プリペイドカードは高額な買い物には利用できないことがある。デビットカードは口座に入っている金額の範囲であれば高額であっても利用することができるが、カードによっては1回の支払い限度額が決まっているものがある。限度額は自分で設定することができるものもあるので確認しておこう。
キャッシュカードとの違い
キャッシュカードはATMで銀行口座からお金を引き出すときに利用するカードだ。銀行口座と直結しているという点はデビットカードと同じであるが、デビットカードは利用時間にかかわらず手数料無料で支払いに利用することができるものが多いのに対し、キャッシュカードはATMの利用時間によっては手数料がかかる。提携金融機関のATMを利用するときも手数料がかかる(金融機関によってはかからないこともある)ことが大きく異なるといえる。
デビットカードの種類を紹介
デビットカードは、銀行や信用金庫などが発行する「J-Debit」加盟のものと、VISAなどのクレジットカードブランド加盟のデビットカードの2種類に分けることができる。
J-Debit
都市銀行や地方銀行、信用金庫、JAバンクなどの多くの金融機関がJ-Debitに加盟しており、口座開設時にキャッシュカードと兼用できるカードとしてデビットカードを発行してもらえることもある。J-Debit加盟のデビットカードであれば、J-Debit加盟店でサービスや商品の代金を即時払いすることができる。ただし、金融機関によっては利用可能な時間が決まっており、それ以外の時間はカードを使用することができない(ネット銀行では24時間対応できることもある)。
クレジットカードブランドが発行するデビットカード
VISAやJCBなどのクレジットカードブランド加盟のデビットカードは、VISAやJCBなどのクレジットカードのマークがある加盟店で利用することができる(一部、デビットカードに対応していない店舗もある)。
日本でのデビットカード使用環境は?
先にもふれたように、デビットカードはクレジットカードとは異なり、利用時点で口座に残高があるか確認しなくてはならないので、店舗などに口座残高を確認できるシステムが導入されていないと利用することができない。そのため、利用金額が決まる前にカード情報を読み取るタイプのシステム(ガソリンスタンドのセルフタイプの給油サービスや高速道路の通行料金)ではデビットカードを利用できないことが多い。
また、デビットカードと直結している口座によっては利用時間が決まっており、その時間外にオンラインショッピングを行う場合などはデビットカードを利用できないこともある。
デビットカードのメリットとデメリットとは
デビットカードにはどのようなメリットとデメリットがあるのだろうか。
デビットカードのメリット
デビットカードのメリットとして、口座残高を超える利用ができないため、無理な買い物や支払い能力を超える買い物をしなくなるということが挙げられる。また、ATMで現金をおろす手間が省けること、ATM営業時間外に利用しても手数料がかからないことなどのメリットもある。
加えて、デビットカードはカード発行に審査が不要で、未成年でも持てるものがあるというメリットもある。カード管理がまだ難しいと思われる高校生でも、デビットカードなら自分が持つ残高以上に利用することができないので、安心して保有することができる。
さらに、デビットカードは利用するとメールで「利用のお知らせ」を受け取ることができるものが多い。1回ごとにメールが届くように設定すれば、もし不正使用などがあってもすばやく気づくことができる。利用限度額を設定できるデビットカードもあるので、使いすぎを防ぐことも可能だ。
デビットカードのデメリット
デビットカードでは一括払いしか選べないので、分割やリボ払いによる高額かつ計画的なショッピングには利用できないというデメリットもある。また、J-Debitの場合は世界的なクレジットカードブランドであるVISAなどに比べると加盟店が少ないため、利用できる店舗が限られるということもデメリットとして挙げられるだろう。
提携する金融機関によっては利用時間が決まっていることや、クレジットカードは利用できてもデビットカードは利用できない場所もある(ガソリンスタンドや高速道路、ネットショッピングなどが多い)ことなどもデメリットといえる。
デビットカードの申し込み方
銀行で口座開設時に申し込み、キャッシュカードとは別に、もしくはキャッシュカード・デビットカード一体型として発行してもらうことができる。また、インターネットで申し込めるタイプのものもある。
デビットカードは利用すると即時口座から引き落とされるので、クレジットカードではお金の管理が難しそうだと感じている方にも適しているといえる。利用限度額やお知らせメールを設定すればさらに賢く安全に利用することができるだろう。