奨学金は新聞奨学金のように働きながら返済するものを除くと、そのまま受け取ることができる給付型のものと学業が修了したら返済しなくてはならない貸与型に大別できる。このなかでも圧倒的に給付人数が多いのが貸与型だ。
貸与してもらったからには返済しなくてはならない。だが、様々な理由で学校を卒業してからも返済が難しくなることがある。奨学金返済の現状と返済猶予制度、返済を滞らせないために出来ることについて解説する。
目次
奨学金返済の現状
NHKが2016年6月2日放送した「クローズアップ現代+:奨学金破産の衝撃 若者が…家族が…」によると、現在、奨学金を借りている学生は約2人に1人であり、このほとんどが貸与型の奨学金を抱えていることになる。つまり、大学生のほぼ半分は社会に出た瞬間に何らかの借金を抱えていることになるのだ。
自分自身の生活の目処がつかずに奨学金が遅れることもある。また、家族への援助や高額な医療費、その他の借金などの理由から、奨学金返済に回すお金がない、給与が保証された職に就くことができないということもあるだろう。そのような理由から奨学金を滞納する人は年間32万人。裁判所から支払督促を求められるケースは年間約8400件。自己破産した人は累計1万人にもなっているのだ。
返済の猶予を利用しよう
もちろん奨学金を貸与する団体も、奨学金を返済できない場合に対して、ただ督促状を送ったり延滞金を請求していたりするというわけではない。
日本でもっとも利用者が多い奨学金団体でもある独立行政法人・日本学生支援機構では、返済が困難な場合は、一時的に月々の返済額を半額にしてその分返済期間を延長する「減額返還制度」や、半額でも返済が難しい場合に利用できる返済を一定期間行わない「返済期限猶予制度」を設けている。
返済期限猶予制度とは
最長10年間(120か月)奨学金の返還を猶予してもらうことができる制度が「返還期限猶予制度」だ。
災害や傷病、生活保護受給中あるいは海外派遣等の特別な理由がある場合は、最長期間を定めずに猶予してもらうことができる。ただし、通常の返還や減額返還が困難と認められたときだけ利用することができる。
所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予
所得連動返還型無利子奨学金を受けている場合は、一定の収入・所得(給与所得の場合は年収300万円、給与所得以外の場合は年収200万円)を得られるようになるまでの期間、奨学金返還を先延ばしすることができる制度である。返済が免除されるわけではないが、返済開始期間を遅らせることができる。
返済猶予の審査や条件は?
返済猶予が適用されるためには、経済的に返済が困難であることを示す必要がある。一般猶予(所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予)の条件は次のように定められている。
傷病
傷病のために就労が困難な場合。もしくは傷病のために給与所得が年間200万円以下になった場合、給与以外の所得で生活している人は年間130万円以下になっている場合。ただし1年ごとの審査が必要。
生活保護受給中
直近2か月以内に発行した生活保護受給証明書もしくは民生委員の証明書が必要。傷病と同じく1年ごとの審査が必要とされる。
入学準備中
在学期間終了後1年以内の人で大学や大学院への進学を準備している人。
失業中
失業後6か月以内で、再就職できていない人。1年ごとの審査が必要。
経済困難
無職もしくは低収入のために変換できない人。1年ごとの審査が必要。
産前産後休業・育児休暇中
産前休業や産後休業、育児休暇中で低収入・無収入状態で返済が困難な人。1年ごとの審査が必要。
他に、海外派遣や外国で研究中の人、外国の学校に留学している人、災害を受けた人なども返済猶予の対象になる。
今後返済を滞らせないために
奨学金は借りられるから借りるのではなく、必要な分だけ最低限の学資を借りることが大切なことである。利息がないから借りておこうと考えても、必ず返済期間は訪れるものであるし、特別な事情がない限りいつかは返済しなくてはならないものである。
借金をなるべく少なくして社会生活を始めることができるよう、必要な額だけを借りることを常に意識しておこう。
猶予は免除ではない
返済猶予と聞くと、返済再開・開始時期をいくらでも延長できるのかと考えるかもしれないが、そうではない。返済猶予が適用されても毎年猶予のための審査はあるし、特別な事情がない限り猶予できる期間も決まっている。
早めに返すことができるよう、安易に猶予を選ばないことも必要だと言えるのだ。