2016年6月2日にNHKで放映された「クローズアップ現代+ 奨学金破産の衝撃 若者が…家族が…」によると、奨学金を滞納した人は約32万人、奨学金が支払えずに裁判所から督促を受けた人は年間約8400人、奨学金のために自己破産した人は累計1万人もいる。
なぜ滞納してしまうのか、いま滞納している人はどうすればいいのか、そして、これから滞納しないために何が出来るのかについて探っていく。
奨学金滞納の現状
文部科学省所管の独立行政法人・日本学生支援機構の報告によると、2010年度に3カ月以上奨学金を滞納した割合(要返還債権に対する3カ月以上の延滞債権比率)は無利子の奨学金である第一種奨学金で6.6%、有利子の奨学金である第二種奨学金で5.7%であった。
2014年度は第一種奨学金で4.5%、第二種奨学金で3.9%といずれも減少しており、奨学金給付口座から返還金を引き落とす「リレー口座」への全員加入や法的措置の強化、債権回収会社による督促架電、コールセンターによる相談体制の強化などが功を奏した形になっている。
とはいうものの、奨学金を滞納する人が如実に減少しているわけではない。年間32万人もの滞納者がいるのも事実であり、滞納者が自己破産に追い込まれて連帯保証人が借金を肩代わりしたり、連帯保証人も自己破産してしまったりする状況も見られている。
滞納者リストとは?
奨学金滞納者の属性を調査することで、将来、どのような人が滞納者になるのかある程度予想することも可能である。
日本学生支援機構が実施した「平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査」によると、無延滞者の55.6%は自分だけで奨学金の申請書類を作成している。ところが、延滞者は自分だけで申請書類を作成した人は33.6%、親が作成した人は37.7%と、自分よりも親が書類作成をした人が多い。
また、無延滞者の90.3%は奨学金には返還義務があるということを奨学金申請手続き前に理解していたが、延滞者の中で奨学金申請手続き前に奨学金の返還義務を理解していたのは49.5%であった。
奨学金の内容をしっかりと把握してから申し込んでいる人の方が、延滞せずに返還できていることが分かる。滞納者リストに載らないためにも、奨学金を申請する前に、奨学金の内容や返還義務について正しい知識を持っておくことが大切だと言える。
また、日本学生支援機構は全国銀行個人信用センターに加盟しているため、奨学金の支払いを3カ月以上滞納すると、個人信用情報機関に滞納の事実が登録される(いわゆるブラックリスト入り)。奨学金は借金だという意識を強く持つことも、滞納者リストに載らないために大切なことと言える。
今滞納している方は相談しよう
たかが奨学金と思って返済せずに滞納してしまうと、信用情報にも傷が付き、ローンを組んだりクレジットカードを発行したりする時にも不利になってしまう。今、滞納している方も、なるべく早く返済して、きちんと定期的に返済するリズムを作ることが大切である。
どうしても返済が難しいときは、日本学生支援機構では返済額を一定期間半額にする「減額返還」や一定期間の支払いを延長させる「返済期限猶予」などの措置を取ることができる。黙って滞納するのではなく、これらの措置を取れる可能性があるかどうか、奨学金返還センターに問い合わせてみよう。1人で悩まず相談することで、道は開けてくるものである。
これから滞納しないために
現時点で滞納している人が猶予などの措置を取ってもらえるかどうか相談することも大切であるが、現在奨学金受給中の人や、これから奨学金を受給しようと考えている人も、滞納せずに支払い続けるためには、貸与型の奨学金は受給期間が終了したら返済(返還)期間がやってくることをよく理解してから受給することが大切である。
「平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査」を見ても、申請書類の作成を自分自身で行い、返還義務があることをきちんと把握している人の方が、無延滞で返還し続けることができている。返済に対して無自覚なまま「借りられるものは借りておこう」という軽い動機で借りることはやめるようにしたい。
貸与と返済は切り離せないもの
借りたものは返すという当たり前のことが、奨学金に対してはできていない人が多いと言える。本当に金銭的に困難な状況に陥った時は、返還期限猶予や減額返還などの制度もあるので、賢く活用し返済責任を果たしていきたい。(ZUU online 編集部)