住宅の取得には、既築であれ新築であれ相応の資金が必要となる。そのため、住宅取得資金をローンなどによって用意するという方が多いだろう。このとき、もしも両親や祖父母など親族に金銭的余裕のあるものがいれば、住宅取得資金について一定の援助を求めるというのもひとつの方法である。

住宅取得にかかる資金は、その贈与税が控除される特例も存在するため生前贈与が非常に有効だ。

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(写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

※本記事は国税庁HPの「 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 」を参考に作成している

住宅取得等資金の贈与税の非課税とは?

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」とは、購入や新築など住宅を取得する目的で資金を贈与された場合、一定の要件を満たしたものについて限度額までの金額を非課税にできるという特例制度である。

平成27年度税制改正において、それ以前よりあった同制度の期間延長・拡充を目的として、平成28年11月28日より公布・施行がなされた。

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住宅取得等資金贈与の非課税限度額

特例の適用によって控除される非課税限度額は、その契約が締結された日付によって次の表より決定される。

イ 下記ロ以外の場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~平成27年12月31日 1500万円 1000万円
平成28年1月1日~平成32年3月31日 1200万円 700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1000万円 500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 800万円 300万円

ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~平成32年3月31日 3000万円 2500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1500万円 1000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 1200万円 700万円

なお表にある省エネ等住宅とは、①断熱等性能等級4、もしくは一次エネルギー消費量等級4、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物、③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上。以上の省エネ等基準を満たし、かつ一定の書類によってそれが証明された住宅を指す。

受贈者(もらう側)の要件とは?

この特例が適用されるための要件は、次の通り。

  • 贈与を受けたときに贈与者の直系卑属(子や孫など)であること(贈与者が受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)であること)
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で、20歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得額が2000万円以下であること
  • それ以前に「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
  • 配偶者や親族など特別の関係がある人から取得した住宅ではないこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに当資金の全額を充てて住宅を新築し、同日までにその住宅に居住すること(またその後も当該住宅に居住することが確実であると見込まれること)

もしも贈与を受けた年の翌年12月31日までにその住宅に居住していない場合は、この特例の適用を受けることができないため留意しておこう。

家屋の要件とは?

また特例の適用を受けるためには、取得する住宅にも次の要件が求められる。

・取得した住宅の床面積が50平米以上240平米以下であり、次のいずれかに該当すること

  1. 建築後使用されたことのない住宅
  2. 建築後使用されたことのある住宅で、取得した日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
    (耐火建築物とは、登記簿に記録された家屋の構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などのものを指す)
  3. 建築後使用されたことのある住宅で、地震に対する安全性基準について一定の書類により証明されたもの
  4. 上記2や3のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅で、その住宅に耐震改修を施す申請及び改修を行い、その安全性基準が一定の書類により証明されたもの

住宅資金贈与の非課税にするための手続き

この特例の適用を受けるためには、仮に控除された結果贈与税がゼロになるとしても申告を行わなければならない。具体的な期限や必要書類は次の通り。ちなみに贈与税の申告は確定申告(所得税の申告)とは異なるため、納付期限等を混同してしまわないよう注意してほしい。

  • 申告期限:財産の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日。
  • 納付期限:申告期限と同年の3月15日。
  • 必要書類:贈与税の申告書(非課税の特例の適用を受ける旨を記載)、戸籍謄本、登記事項証明書、契約書の写し。そのほか本人確認書類など。

特例は増改築にも適用が認められる

なおこの非課税の特例制度は、住宅の増改築に充てるための資金についても適用することが可能だ。すでに住宅を取得してしまったという方は、増改築によってこれを利用することを検討してみてはいかがだろうか。

増改築について特例を適用するための主な要件は次の通り。

  • 増改築後の住宅の床面積が50平米以上かつ240平米以下であること
  • 増改築等に係る工事が、確かに対象となる住宅に対して行われたものであり、その工事が一定の工事に該当することを「確認済証の写し」「検査済証の写し」、または「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
  • 増改築に係る工事に要した費用が、100万円以上であること

住宅取得資金等の非課税は積極的に活用したい

特例の適用を認められれば、省エネ等住宅についてはおよそ1000万円前後の控除、それ以外の住宅についても最低300万円から控除を受けることができる。消費税増税後は軒並み控除額も上昇するが、住宅取得費用そのものも相応に上昇するためどちらの方が得か判断することは難しいだろう。

この非課税の特例の利用を検討する上では、非課税限度額に意識を向けるのではなく、あくまでも自身が住宅を取得しようとする時期、増改築工事をしようとする時期に適用期間が含まれているのであればこれを申請する、といった向き合い方が相応しいのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

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