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中国のガラス細工職人(写真=PIXTA)

中国のニュースサイト「今日頭条」で12月26日、日本の職人気質と中国の工匠精神と題する記事が掲載された。内容を追ってみよう(以下、文中敬称略)。

技術情報サービスサイト「極牛」の市場総監、ダニエル・チャンは少年期を東京で過ごした。家庭の事情により16歳で独立して生計を立て始め、すぐに日本人とその文化に溶け込んだ。日本での仕事は13年におよび、その日常生活、商業文化に造詣が深い。記事はまず彼の見た日本の職人気質から始まる。

日本の職人

職人--自己の熟練技術で手作りの産品を作る職業。江戸時代の士農工商では工に当たる。悠久の日本史の中で、職人とは人民から尊重される職業だった。人は職人の精錬された手工業技術を“職人芸”と呼び、それは芸術との境界に極めて近いものだ。

その技術伝承の主要手段は徒弟制である。もう一重要なのは仕事場である。普通は許可を得ないと入れない環境の下、師匠から弟子への技術教授が行われる。また弟子は師匠から盗んで学ぶ。弟子は師匠の作業を、不断に心中で重複模倣し“職人的自己”を作り上げる。仕事外の自分の時間でさえ練習に励む。そうしてやっと職人と認められるようになる。

現在では伝統工芸品の職人や、石工、木工、庭園設計、瓦、竹、ガラスなどの他、金属加工技術の領域まで“技術職人”に含める。さらに食品の領域では、懐石料理や寿司などにも存在し、第一級の仕事は職人的と称される。

存在しないかつての中国の工匠

続いて記事は中国の現状を分析する。

李克強首相は3月5日の「政府工作報告」で中国の工匠について触れた。各企業の個性的展開を奨励するとして、生産の柔軟化、工匠精神を真剣に育成することの2点を挙げた。王朝時代にすぐれた作品を生み出した中国の工匠は、現代に継承されていない。李首相はもはや存在しないことを認めざるを得なかった。

シャオミ(小米)の雷董事長は、日本の炊飯器は機能はもとより米一粒にいたるまで匠の心を感じさせる。しかし全国民が“銭”のほうを向いている中国では、職人はそれにふさわしい尊重を受けていないと述べた。

広東省・仏山市の環境機材メーカーで技術顧問を務める日本人I氏は、業界歴40年の職人である。同氏は次のように指摘する。中国の工場では生産現場のブルーカラーは、事務所に陣取っているホワイトカラーより劣ると思われている。

日本の工場では双方を同じように重視する。ブルーカラーのほうがより大きな尊敬を受けることもある。人間国宝奨励制度と言ってよく、これが多くの匠人をたゆまぬ努力に向かわせる。これこそ日本製造業発展の基礎である。

またこれは日本に長寿企業の多い理由でもある。中小型長寿企業の多くは上場せず、規模の利益より企業文化、顧客と従業員を大切にしている。

中国の企業文化では無理?

職人気質の充満した長寿日本企業は、中国企業に、質は量より永遠に優先されるべきものと告げている。中国企業は職人とその技術を、その場の金銭的損得により軽視してはならないと記事は結ばれている。日本企業に対する分析は的確だ。

ところが中国でその実現は非常に困難である。問題は中華思想そのものだ。それは他人の上にたって自己を安定させようというエネルギーで成り立っている。都市の農村差別には目もあてらないひどさであるし、すきあらば独立して人の上に立とう、というは人多い。これはこれで今までの経済発展の原動力になってきた。

しかし今後質を伴った発展を目指すにはマイナス要因でしかない。従業員は使い捨て、チームワークは苦手、儲からなくなったら投資家へ変身などの要素も大きな問題だ。中国企業の長寿企業への道のりは茨の道である。

逆に日本企業は当面安心だが、気にかかるのは経営者の劣化だろうか。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)