東京証券取引所の1部市場に上場する企業数が2000社に達し、初の「2000」の大台に乗った。長年にわたりそれぞれの業界で実績を積み、技術力を磨き、経営基盤を固めてきたこれら上場企業の中で、2017年に大きな節目となる創業100周年を迎えるのはどの企業か。その道半ばといえる50周年を迎える企業のほか、200周年、300周年と驚くべき歴史を誇る企業も紹介する。

100周年上場企業に生活密着メーカー並ぶ

東京商工リサーチ(TSR)と帝国データバンク(TDB)の調べによると、2017年に100周年を迎える上場企業は「SUBARU」へと商号変更を予定している自動車メーカー「富士重工業」、光学機器メーカー「ニコン」、乳製品メーカー「森永乳業」、住宅設備機器メーカー「TOTO」、タイヤメーカー「横浜ゴム」、北海道最大の金融機関「北洋銀行」などがある。

ここに挙げた企業では、北洋銀行以外は、自動車やカメラ、乳製品、水回り、タイヤといった日常生活に密着した製品のメーカーが名を連ねており、世界的な企業に成長している。

このほか100周年を迎える非上場の大手企業は、金属容器メーカーの「東京製罐」や食品メーカー「ヤマキ」など。国内企業全体では、TSRは1118社、TDBは1011社(うち上場は31社)としている。

設立年の1917年(大正6年)といえば、世界は第一次大戦のさなか、ロシア革命が起きて史上初の社会主義国家樹立につながった。国内では「大正6年の高潮災害」が起き、東京湾一帯で大きな被害が出た。経済面では、金・地金輸出取締令が出され、金本位制が停止した。このころ日本製品の輸出が急増したことが影響しているのか、100周年企業の業種では製造業が3割近くと最も多い。所在地の都道府県別では東京都が最も多かった。

100周年企業の中には2017年を前に、すでに記念事業を始めているところもある。ニコンは設立以来、受け継がれてきた光利用技術と精密技術を紹介する場として、2015年10月に「ニコンミュージアム」をオープン。TOTOも創業精神やモノづくりへの思い、生活文化を向上させてきた歴史の紹介を目的に「TOTOミュージアム」を開いている。

50周年、200周年、300周年を迎えるのは

100周年以外にも、周年記念企業は多い。TDBは10年、20年、30年と200周年までは10年刻み、それ以上は50年刻みで集計したところ、節目を迎えるのは全国で14万5103社(上場企業は458社)と発表。うち50周年は2万3273社(同36社)、200周年は6社(同0社)、300周年は22社(同1社)、400年は2社(同0社)としている。一方、TSRは50周年は2万3514社、200周年は4社、300周年は34社、400年は5社と集計した。

50周年企業が生まれた1967年(昭和42年)はいざなぎ景気による高度経済成長期。上場企業では家具小売り「ニトリホールディングス」、スーパーマーケット「フジ」、ハウスメーカー「ミサワホーム」などが該当する。

非上場では建設機械器具賃貸業「レンタルのニッケン」、金融業「三井住友カード」などがある。

一方、200年前の1817年(文化14年)といえば、日本は江戸時代。アメリカではニューヨーク証券取引所が発足した年だ。国内ではフェルト・不織布製造業「ツジトミ」が生まれた。上場企業はない。

300年前の1717年(享保2年)は京都に大丸の前身である呉服店大文字屋が開業した年でもある。初代伏見屋市兵衛の創業から数えて300年になるのが、上場企業で医薬品製剤製造業「小野薬品工業」。非上場では、米屋を営む初代喜兵衛が副業で酒造りを開始したのが始まりとされる清酒製造「沢の鶴株式会社」は今日まで14代続いている。非上場はこのほか、酒類卸売業「ぬ利彦」がある。

周年を記念する意味

企業が発足してからの年月をきりのいい年数で区切って周年として祝うことは、どんな意味があるのだろうか。

TDBは「こうした周年記念イベントは自社ブランドの向上などを期待して実施されるものだが、全社員が企業理念などを改めて共有することで、団結力を高める機会を創出するという側面もある」としている。

TSRは「周年記念を迎える企業はほんの一握りだ。社会や経済が刻々と変化する中、市場動向をみながら柔軟に対応しなければならない。主力の事業が不振に陥っても、新たな事業を育て成長に導くための独自の経営ノウハウが蓄積されている」と指摘。

そのうえで「周年記念を迎えることは、次のステージに向かい自社の歴史や世紀を超えて事業を発展、継続してきた背景を振り返り、今後の展望を描くチャンスでもある」としている。周年企業の活躍を、2017年は期待したいものだ。(飛鳥一咲 フリーライター)