感謝,ありがとう,ストレス,カウンセリング
(写真=PIXTA)

「感謝の気持ちを持ちましょう」「ありがとうを伝えましょう」--。こうした言葉が自己啓発本に限らず雑誌やSNSにもあふれている。誰もが意識しなくても目にしているはずだ。

ここ数年、「感謝」を勧める声が高まっている。私自身、感謝は大切な事だと思っており、こうした「感謝ブーム」を否定するつもりはない。ただ、感謝には良い面ばかりでなく、場合によっては自分自身を苦しめてしまう面があることが知られていないのは、危険だろうと思う。

「感謝」が良いとされる理由

昨今感謝が良しとされる理由は、感謝をすると幸せになれる点にある。感謝することは恵まれている側面に目を向けることであり、そのため精神的に豊かで満たされる効果が期待できる。人には何かされたらお返ししたくなる「返報性の法則」という心理が働くため、周囲からの感謝やサポートが得られ、ビジネスでもプライベートでも成功しやすくなる。こうした点が人気の理由だろうし、心理カウンセラーとしてもこれらの効果は頷けるものである。

しかし、実際には素直に感謝の気持ちを持てない、感謝が心の負担となる場合もある。負担に感じても「感謝は良いものだから」と無理して行えば、ストレスが蓄積され、やがて心の不調を引き起こす原因ともなる。では、どんなケースで心の負担となるのか。マズローの欲求5段階説で見ていくと分かりやすい。

感謝が心を苦しめる2つの理由