今すぐやめるべき「7つの仕事」とは?
日々、忙しさに追われている中堅社員。だが、そもそもその仕事は本当に「すべき仕事」なのだろうか。仕事を効率的にこなすだけでなく、「やらない」ことを決めることで時間を効率化する手法を、多くのビジネスマンに働き方を指導してきた俣野成敏氏に教えていただいた。
「本当にすべき仕事か」を常に疑おう
部下をマネジメントしながらプレーヤーとしても成果を出さねばならない今の中間管理職世代は、常に膨大な量の仕事に追われています。ただ、効率性のみ求められていた右肩上がりの時代と違って、現代は「チームでどれくらいの成果を上げたか」といった効果も求められる時代。
そこで、効率的にチームの成果をあげるには、「いかに速くこなすか」から、「何をやらなくていいか」への発想の転換が必要です。
では、やらなくてもいい仕事とは何か。ポイントは3つです。
1つ目は「自分でなくてもできる仕事はやらない」こと。
一般的に、立場が上がれば上がるほど給料が上がり、その分高い成果が求められます。にもかかわらず、部下でもできるような作業に取り組むことは、会社全体の生産性を考えれば大きなマイナスです。
たとえば、議事録作りといった作業は、やり方さえ教えれば新人でもできること。自分の給料を時給換算して「これは本当に自分でやるべき仕事だろうか」と考える癖をつけ、すべきでないと判断したら誰かに任せてしまう。これだけでも負担は大きく減るはずです。
2つ目は、「繰り返しの仕事や作業を極力しない」ことです。通常業務の多くは、過去に経験してきたことの繰り返し。こうした作業は、「過去のひな形を使う」ことで効率化できます。たとえば、メールの作成が挙げられます。過去に書いた文章の中から汎用性の高そうなものを保存しておき、それをベースにすれば、ゼロから書き始めるよりも時間を短縮できます。
メールのみならず、資料作成などあらゆる業務について「ムダな繰り返し作業になっていないか」という観点で見直しを図ることで、効率的な働き方を実現できるのです。
3つ目は「経年劣化した仕事をやめる」こと。今では価値がないのに、惰性で続けている仕事をやめることです。
こうした作業は、探してみると結構あります。とくに部署移動の引き継ぎの際に明らかになることが多いもの。たとえば、かつて私が生産管理部門に異動した際、仕事の1つとして製品在庫の集計作業がありました。しかし、自動化すべく情報システム部と連携した結果、手作業そのものが必要なくなりました。このように、過去には当たり前に必要だったが今では不要な作業が、なんとなく続けられていたという好例です。
こうしたムダな仕事を見つけるには、「後工程に聞く」方法が有効です。他部署や取引先に「私たちがやっているあの仕事、役に立っていますか」とヒアリングし、微妙な反応だったら、それはすでに経年劣化した仕事です。
このように「しないこと」を決めるだけでも、今まで以上に時間的余裕が生まれ、より生産性の高い仕事に集中できるはずです。以下、その他6つの「やめるべきこと」をご紹介しましょう。
明日からやめる仕事1 最後まで仕事をやり遂げない
担当する仕事を最後までやり遂げる意識は、ビジネスマンであればとても大切です。ただ、それが残業を増やす原因となることも事実。
むしろ、中間管理職世代といったマネジメント層は、仕事に着手した瞬間から、「いつ途中で手放すか」を常に考えるべきなのです。
もちろん、部下が一定のレベルに達していないため、仕事を任せられない場合もあるでしょう。そこで求められるのが、料理で言うところの「下ごしらえ」をした状態で仕事を渡すという発想です。
さらにいえば仕込みも、レシピを作ってその通りに仕事をしてもらうことで、最初から部下に任せることができます。レシピを作るとはつまり、マニュアルを作るということです。
議事録の作成を例に説明しますと、途中まで作った議事録を部下に渡す。さらに、作成マニュアルを作って渡してあげれば、あとは勝手にやってくれるようになるでしょう。
ちなみに、ここでも「最後までやり遂げない」発想が生きてきます。マニュアルも1から10まで全部作ろうとすると大変ですから、大まかな方針だけ決定したら、部下自身にマニュアルの作成作業をしてもらうのも手です。
仕事を途中で手放して続きを部下に任せるというスタンスは、部下育成にもつながります。そして、部下が成長することによって、ますます任せられる仕事が増えていくので、さらに時間的余裕が生まれる。自分はさらに難度の高い仕事のみに専念できるようになるのです。
「最後までやり遂げない」というと、責任感がある人ほど、抵抗を感じるかもしれません。ですが、仕上げの部分だけ渡すということは、「部下に美味しいところ(成果)を渡す」ことでもあります。達成感は味わいにくいかもしれませんが、寛大な行為をしているのだと、自分に言い聞かせましょう。
明日からやめる仕事2 仕事を安請け合いしない
予定どおりに仕事が終わらない理由の1つに、突発的に発生する業務が挙げられます。
たとえば、上司から「この資料、今日中にまとめてくれないかな?」などと頼まれると、つい締切りが迫っている自分の仕事を後回しにして、上司の仕事を優先しがちです。
私は、上司から頼まれた仕事を引き受けることが、一概に悪いとは思いません。上司に「貸し」を作ることができるからです。
とはいえ、「自分より下の部下にもできる仕事」を容赦なく振ってくる上司がいるのも事実。プロジェクト参加者のスケジュール調整を任せてきたり、明日の役員会議で報告するデータを用意させるといった作業は、その典型でしょう。
ではなぜ、こうした仕事を頼まれるのか。それは、「上司のすぐ目につく場所にいるから」です。
ということで私は、「自分の仕事が立て込んでいて、誰にも邪魔されたくない」というときは、「1人会議」を組むようにしていました。
「1人会議」とは、共有のスケジューラーに「会議」と書き込んでおき、自分のためだけに会議室を確保しておくこと。誰にも邪魔されない会議室で、黙々と自分の仕事に取り組むのです。間違えて誰かが覗いてきたときは、「あれ、まだあいつ来ないな」という小芝居をしていました(笑)。よく邪魔が入る時間を分析しましょう。
ただ黙って上司の仕事を安請け合いしていると、上司の便利屋さんになるだけで、自分の仕事は終わりません。便利屋だと思われていると、本当に重要な仕事を振ってくれなくなる恐れもあります。
新人のときには、任された仕事を確実にこなすことが必要でしたが、中間管理職ともなれば、「仕事を選ぶ」といったスタンスを取ることも大切です。難度が高く、「あいつにしかできない仕事」だけを振られる人材になってください。
明日からやめる仕事3 会議に出ない
一般的に、日本の会社は会議が多いといわれています。とくに大手企業ほど、その傾向が強くなります。会議のために、本来やらなくてはいけない仕事が後回しになり、その結果労働時間も延びてしまうのです。
私も会社勤めだった頃、会議の多さに辟へき易えきしていました。そこで私は「出る必要がない」と判断した会議には、思い切って出ないことにしました。だいたい1年のうち半分くらいの会議は欠席していたと思います。
もちろん自分がその会議でプレゼンをしなくてはいけなかったり、会議の結論がチームの今後の方向性を左右する場合などは、出席する必要があります。
ただ一方で、発言の機会もなければ、必要性もないような会議もあるもの。そうした会議は、出る必要はありません。
ただし、会議に出ないとなると、「自分だけ最新の情報や決定事項から取り残されるのでは?」という不安も残るでしょう。
そんなときは事前に「情報屋」を確保しておくことをお勧めします。会議に出席するメンバーの1人に声をかけ、「今度ランチをおごるから、会議の情報を教えてよ」などと根回ししておくのです。会議を欠席する際には、自分がその場にいなくても、周囲から不審に思われないように大義名分を作っておくこともポイントです。
私の場合は、会議の時間には、別の重要な予定を入れるようにしていました。大切なのは、ただ単にムダと思える仕事を減らすのではなく、減らす以上の時間の使い道を考えることです。周りも「◯◯さんは重要な商談があるから、会議に出席できないのは仕方がないな」と納得してくれるのです。
そんなことをして大丈夫かと感じるかもしれませんが、時間を有効に使うということはそれくらい大事なことなのです。
何気なく参加しているその会議は、本当に自分にとって必要なのかどうかを今一度見直してみてください。
明日からやめる仕事4 メールを読まない
毎日大量に来るメール。一通一通丁寧に対応していると、時間がいくらあっても足りません。そこで大切なのは、自分にとって重要度が低いメールは読まなくてもよい仕組みを作ることです。
たとえば、自分は直接業務に携わっていない案件がCcで送られてくることが多々あります。そんなときは「このメールは担当の○○に送ってくれれば、私には送らなくても結構ですよ」と連絡しておくだけで、メールを読む時間を短縮でき、読む作業自体が発生しなくなります。
どうしてもメンバー間で情報を共有する必要がある案件については、メールのCcは使わずに、チャットワーク等のソフトを活用しましょう。用件だけをポンポン送ることができるので、作業時間の短縮につながり、情報共有のヌケモレもなくなるのでお勧めです。
明日からやめる仕事5 2次会に出ない
忘年会や新年会、歓迎会や送別会、プロジェクトの打ち上げといった会社主催の飲み会では、たいてい2次会があるものです。
本当は1次会だけで帰りたいのに、「課長の自分が残らないのはまずいかな」などと考えてつい出てしまう人がいます。
ただ、それが平日の夜であれば、翌日の仕事のパフォーマンスは確実に低下します。それがさらなる残業を生み、さらに疲労が蓄積されていきます。「みんなとお酒を飲むのが何より好き」であれば、お構いなく飲めばいいと思いますが、いやいや2次会につき合っているのであれば、単なる時間のムダです。そもそも2次会にもなれば、みんな酔っ払って「ぐだぐだ」になっていますから、意味のある会話など期待できません。
1次会で帰るコツは、みんなが1次会を終えて店の前で「次はどうする?」などとだらだらと話している隙に、そっといなくなることです。下手に「私は帰ります」などと言うと、「そんなこと言わずに、もう1軒行きましょうよ」などと引き留められてしまいます。
うまく抜け出して電車に乗ってから、幹事や2次会のメンバーの1人に「今日はありがとうございました。先に帰ります」と1本メールを打っておけば問題ないでしょう。
ただし、私は2次会を戦略的に利用する手もあると思っています。歓送迎会や打ち上げなどの場に、普段はなかなか話をすることができない人物も参加することがわかったときに、「1次会のあと30分でもいいのでご一緒してくれませんか」とお誘いするのです。そして2次会に向かう他の大勢のメンバーとは別れて、2、3人の少人数でじっくりと話します。
どうせ時間を取られるのなら、それを価値のある時間にしたいものです。
明日からやめる仕事6 朝会をしない
定期的なミーティングはマストだと思っている人も多いですが、単なる決定事項の報告に終わっているケースが多々あります。ただの報告ならば、わざわざメンバーを集める必要はなく、電子掲示板などで情報共有すればすむ話です。そういう機能が社内になければ、資料の配付でもいいでしょう。
インターネットが発達していない時代は、情報共有のための顔合わせは重要でしたが、今は必ずしもその必要はないのです。チームリーダーにもなれば、チームの裁量は自分が握っているはず。ルーティンとして行なっているミーティングも、開く必要がないと判断したものは、廃止すべきです。たとえば、朝会は経年劣化した仕事の代表と考えられるでしょう。顔合わせ程度なら、廃止してもいいでしょう。
ただし課長レベルの判断では勝手にやめられないこともあるでしょう。そんなときは発想を転換して、面白くてクリエイティブな朝会を目指してみることをお勧めします。ムダなことを「いかに有益にするか」という発想も、時間管理には必要な考え方なのです。
明日からやめる仕事7 ダラダラ残業をしない
世の中には、残業が常態化している職場がまだまだ多いようです。とくに中間管理職の仕事は山のようにありますから、漫然と仕事をしていると、毎日のように残業せざるを得なくなります。
多くの人が残業をしている1番の理由は、残業を前提とした働き方をしていることにあります。本気になれば7時間で終わる仕事も、「10時間で仕上げればいいや」と妥協をするから、集中力がガクンと下がってしまうのです。
ですから、残業をやめたければ「原則午後7時までには仕事を終わらせて退社する」といったルールを自分の中で徹底するのが1番です。
実際、子供を保育園に迎えに行かなくてはならない共働きの夫婦は、定時で帰れるように、いつも仕事の段取りを意識して働いているはずです。
では、そうではない人はどうすればいいのか。残業なんてやっている場合ではない状況に自分を追い込むのです。具体的には、仕事以外の優先順位の高い用事を予定に入れてしまうのです。
たとえば、ビジネススクールに通うようになれば、高い学費を払ったぶん、授業に間に合うよう必死に仕事を終わらせようとするはずです。
一方で、部署の人間が残業しているのに、自分だけ帰るのは気が引けるという声を耳にします。こうした方々には、「思い切って慣れ合うのをやめよう」といったアドバイスをしたいと思います。たとえ、「チームの和を乱す」と陰口を叩かれようと、気にせず「お先に失礼します」と言って帰りましょう。残業が常態化した人たちに合わせていては、いつまで経っても仕事を効率的にこなすクセはつきません。
もしも、今の残業体質の職場に少しでも違和感を抱いているのなら、「自分がこの状況を変える」くらいの気概を持って欲しいものです。
俣野成敏(またの・なるとし)(同)プロ研代表
1971年、福岡県生まれ。93年、大手精密機械メーカー入社。2002年、会社の赤字転落が原因で30歳にしてリストラ候補に。そこで一念発起し、在庫処分を担うメーカー直販店を社内起業。30代で年商14億円の無借金企業に育てる。04年、33歳で現役最年少役員に抜擢。メーカー本体に帰還後、40歳で史上最年少の上級顧問に就任。12年に独立。複数の事業経営のかたわら、私塾「プロ研」を創設。著書に、ベストセラー『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)、『一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?』(上野啓樹氏との共著/クロスメディア・パブリッシング)などがある。(取材・構成:長谷川 敦)(『
The 21 online
』2016年12月号より)
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