business
(写真=Creativa Images/Shutterstock.com)

経済学と経営学は似て非なるものだ。両者が近接した学問であることに違いはないが、経済学は家計、企業、政府などの相互作用に基づく経済活動全体を分析対象とするのに対し、経営学は企業に特化して研究する点に違いがある。

経済学は資源の効率的な配分を考える学問

経済学は、資源(ヒト・モノ・カネ・情報等)の効率的な配分によって自分たちがより豊かになることを考える学問といえる。

世の中のあらゆる資源は限られている。天然資源は埋蔵量が限定され、再生可能エネルギーは自然環境の変化に大きく左右されることから安定供給が容易ではなく“無限”とはいい難いものだ。また、現状においては農産物や水産物は地球の枠を超えて生産できず、労働力も人口と時間によって上限が存在する。

こうした限られた資源を、どのように配分して活用すれば人々の生活が豊かになるのかを考え、実態分析と理論構築を行う学問が経済学であるといえよう。また、資源配分とは何かを選択すると同時にほかの機会を捨てる行為であるといえる。例えば、社員数人のチームにあるプロジェクトの進行を依頼すると、その選択によってそのチームが他の仕事をする機会を捨てることになる。

このような「機会費用」が発生してでも選択を行う理由は、その選択によって行われる経済活動が同時に発生する損失(機会費用)を差し引いても、意味のあるものであると判断されるからである。上述の例に準じてもう少し詳しく説明すると、プランAとプランBの2つのプロジェクトがあるとしたら、プランAを選択しないことによるデメリットよりも、プランBを選択するメリットのほうが大きい、つまりプランBのほうが経済的にプラスであるという判断をしたことになるのだ。

このように、常に選択しなかったことによる「機会費用」が発生していると認識しつつ、どれが一番得であるか、経済的であるかをその都度判断しながら、さまざまな経済活動が行なわれていることを念頭におくべきである。

しかしながら、現実としては選択には必ずリスク・リターンが付きものである。このことから、よりリターンが望めるものにはそれだけのリスクが内在しているので、常にたくさんの利益を取ろうとすることが判断基準となるわけではないともいえる。つまり、その場面ごとにおいて、あらゆる要素を把握した上で総合的な判断をすることが重要であり、状況によってはあえて更に大きなリターンを取りに行かない選択もありうるのだ。結論として、余計なリスクテイクを選択しなかったことにより、トータルでプラスになっていればよいのである(将来的な利益や損失リスク低減など含む)。

さて、ここで現実から経済学の話に戻るとしよう。一般的に市場経済の中では、資源配分は価格調整機能の働きにより、需要と供給が一致する点で行われる。しかし、資源配分が社会的に妥当とは言い難い場合に、経済政策が発動されるケースもある。例えば、医療サービスが需給の均衡点で供給されるとなると高額な医療費を支払うことが容易ではない人たちが多くなるため、国民健康保険制度を設けることで該当する人たちの家計の負担額を減らしているといえる。

経済学とは、市場経済の前提の中で資源の最適配分の仕組みを動かすことを通じて、社会に貢献するものではないだろうか。

経営学は企業全般を研究する学問

近代経済学は全ての合理的な経済主体が「損得勘定」により行動することを前提にしている。なぜなら、そうした共通の行動原理を仮定しなければ経済全体の分析が困難であるからだ。

これに対し経営学では多様な経済主体の中から企業にフォーカスして研究するため、その社会的意義も含め幅広く分析・検討を行う。企業にとって利潤最大化は中間目標に過ぎず「儲けたお金をいかに有効に使うべきか」、「労働分配率(人件費÷付加価値額)の適正水準はどこか」といったことも重要な研究テーマとなっている。

利潤最大化の方法も千差万別だ。このため経営体制、業務管理体制、生産要素(ヒト、モノ、カネ、情報)、営業・マーケティング、事業開発、M&Aなど多種多様な研究対象が存在しており、調査・分析手法はデータ解析とケーススタディに大別される。生産効率の向上をテーマにした場合、さまざまなデータ分析により問題点を明確にして改善方法を検討するアプローチと、具体的な改善事例を調査して効果的な対策を整理する方法がある。

経営学は科学であり、客観的なデータ分析に基づく理論構築は極めて重要だが、同時に個別性が強く成功・失敗事例が存在するため、ケーススタディの有用性も高い。経営学を学ぶ者にとっては両者のバランスをとることが重要であるといえる。

経済学・経営学の知見は経営者に必須

経営者は学者ではない。したがって、第一線の経済学・経営学をフォローする必要性は低いだろう。しかし、ビジネスを研究対象とする学問の基本の部分に関して理解していなければ、心もとないのではないか。

マクロ経済政策は現実のビジネスにも大きく影響する。例えば、2013年から始まっている日銀の緩和的な金融政策により企業の資金調達コストは低減し、資金繰りも改善されているだろう。このような情勢変化を認識し、先行きを予測するうえで経済学の基礎知識は欠かせないのではないだろうか。

経営学の成果は、他社の成功・失敗事例を科学的に分析したものである。その中には必ず自社の経営に活かせるものがあるはずだ。そうした情報の収集、分析、判断力も経営者には今後より高い水準で求められるだろう。(提供: 百計オンライン

【オススメ記事 百計オンライン】
イ・ボミを支える韓国の環境と日本の匠
不動産王ドナルド・トランプってどんな人? トランプタワーから過激発言まで
中国マネーによる不動産爆買いは続いているのか?
映画の登場人物がつけている腕時計特集
10位でも1億円!? 世界一高いスーパーカーランキング