お金の教養を身につけるのにうってつけのマンガ『インベスターZ』のエピソードを引用しながら、投資の基本と本質、そのおもしろさについて解説していきます。『インベスターZ』は、とある進学校にある秘密のクラブ「投資部」を舞台にした投資マンガです。
わけもわからず投資部の部室へと連れられてきた主人公孝史は、先輩たちが興じていたマージャンに興味を持ちます。ルールもロクに知らないまま孝史はあえなく惨敗。そんな孝史に、投資部キャプテン圭介は「カモ」になることのリスクを説きます。
(本記事は、三田紀房氏、ファイナンシャルアカデミー・渋谷豊氏の著書『 せめて25歳で知りたかった投資の授業(星海社新書) 』の中から一部を抜粋・編集しています)
素人とプロが同じ環境で戦うのが株式市場
様々な上場企業が名を連ねる株式市場は、とても巨大な代物です。製品やサービスなどの売買で成立する「世界貿易取引高」(いわゆる実物経済)が年間16兆ドル(1920兆円)であるのに対し、株式は年間50兆ドル(6000兆円)にまで及びます。
これに各国通貨が取引されることで成り立つ「為替(かわせ)市場」を合わせると、1050兆ドルにまで及びます。モノを売ったり買ったりする市場の何十倍もの大きさで、「権利とお金」が売り買いされているのです。投資の世界が巨大であることが分かっていただけたと思います。
個人投資家や、証券会社で働くプロ、ヘッジファンドといわれるプロ中のプロが混在するこの市場、日本市場全体に占める個人投資家の割合は、17%という数字があります。
「えっ、意外に少ないなあ」という印象を持つ人もいるでしょう。しかし、少ないながらも毎年利益をあげている個人投資家は大勢います。
若いうちからはじめた方が経験も積めますので、投資を行うことは是非おすすめしたいのですが、注意点もあります。残念なことではありますが、この世界には投資の経験が浅い方を「カモ」にしようとする人間がいるのも事実です。
「タダほど高いものはない」という言葉もありますが、たとえば証券・金融機関には「無料相談窓口」というものがあります。もちろんすべてがそうではありませんが、「教えてください」と若い人が駆けこんだ際、これ幸いと、質の悪い金融商品を薦めるケースがあります。
「よくわからないものには投資しない」でリスクを排除を
いまも現役の世界的投資家で、ウォーレン・バフェットという人がいます。彼は多くの名言、まさに「金言」を残していますが、その中のひとつに、こんなものがあります。
「リスクとは自分が何をやっているか、よくわからないときに起こるものです」
リスク――。投資を行うにあたって常に気をつけなければならない、大事な大事な言葉です。
「B社の経営は安定的だが、社長が高齢というリスクがある」 「市場は政策発表前日、リスクを避け売り一色だった」 「先進国は、中東情勢特有のリスクに警戒感を持っている」
様々な場面で使われますが、日本語に直すなら「不安定要素」とでもいうべきでしょうか。いい方向に転がるのか、悪い方向に転がるのかはわからないが、どちらかといえば悪い方向に転がる可能性の方が高そうだというのが「リスク」の指す状態かもしれません。
ウォーレン・バフェットは、
「自分が何をやっているかわからないときに、リスクは発生する」
といいました。野球でもサッカーでも、ゲームに参加するとき、ルールや技術を知らないと戦略をたてられませんし、勝つこともできません。打ったあとサード方向に走ってしまったり、自陣のゴールにボールを蹴り込んでしまうかもしれません。
これと同じで、投資にもルールと技術が必要です。何も知らないと、あなたの投資はリスクだらけになってしまいます。
リスクを排除するための最も基本的な考え方は、
「よくわからないものには投資しない」
ということです。企業の株を買うなら、投資先の企業がどんなビジネスをやっていて、いま現在の経営状況はどうなのか――これを知らずに買うようなことはしないようにしましょう。
三田 紀房
漫画家。岩手県生まれ。大手百貨店勤務などを経て、30歳で漫画家デビュー。高校野球を監督の視点から描いた『クロカン』や、『甲子園へ行こう!』で人気作家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。
ファイナンシャルアカデミー
渋谷豊
ファイナンシャルアカデミー執行役員。熊本県生まれ。大学卒業後、邦銀を経て慶應義塾大学大学院にて経営学を学ぶ。その後に外資系銀行に舞台を移し富裕層向けの資産運用を担当。海外勤務中にリーマンショックを経験し、激動期を乗り切る。為替・金融に精通し、現在はファイナンシャルアカデミーの教壇に立ち、金融リテラシーの向上に努めている。