拡大・分割・俯瞰の3ステップを紙の上で展開!
あらゆる仕事は「問題解決」の連続だ。そこでもノートが威力を発揮する。問題解決のためのアイデア出しやその整理・分析、そして実行に移すためのノートの使い方を、「A3ノート術」の達人・横田伊佐男氏にうかがった。
自由に書き直せるから思考を深めていける
ビジネスマンの皆さんは、仕事上のさまざまな問題の解決に日々取り組んでいると思います。その際に有効なのが、次の3つのステップで考えることです。
(1)拡大思考
……問題の原因や解決策をできるだけ多く出す。
(2)分割思考
……出てきた意見やアイデアを整理して、絞り込む。
(3)俯瞰思考
……問題解決のために行なうべきことの全体像を俯瞰したうえで、実行計画を立てる。
そして、この一連の思考をするために便利なツールがA3サイズのノートなのです。
いきなりPCに向かって考え始める人が多いのですが、そうすると、どうしても「きれいな書類にまとめること」に意識が向かってしまいます。すると、深く掘り下げたアウトプットになりません。
紙であれば、ペンで何度も書き直したり、付箋を貼り直したりするうちに、思考が練り上げられていきます。1枚の紙を複数のメンバーで囲みながら意見やアイデアを述べあうこともできます。
A3サイズをお勧めするのは、サイズが大きいほうが内容を1枚にまとめやすいから。1枚にまとめると、全体像が把握しやすくなります。30枚の資料を読み込んで理解するのは大変ですが、1枚の紙にまとまっていれば一目瞭然です。
3ステップのそれぞれを1枚の紙にまとめよう
ここでは、具体的な問題解決の例として、「ハンバーガー店の責任者として、売上げアップを求められている」という状況を仮定しましょう。
まず、 (1)拡大思考 では、解決策のアイデアをできるだけ多く出します。
ポイントは、論点を具体化し、かつ、疑問形でテーマ設定をすること。「売上げアップ策について」といった漠然とした形ではなく、「顧客数を2倍に増やすには、何をすればいいか?」というように設定するのです。すると、ゴールが明確になるので、具体的なアイデアが出せるようになります。
出てきたアイデアは、質より量を重視して、A3のノートにどんどん書き込んでいきましょう。
次の (2)分割思考 では、出てきたアイデアを整理していきます。
整理の方法はいくつかありますが、どんな場合でも使いやすいのは、縦軸に「効果」、横軸に「難易度」を置いた「ペイオフマトリックス」を作り、アイデアを振り分けていくことです。そして、難易度が低く、しかも効果が高い「レバレッジエリア」に振り分けられたアイデアだけを採用するのです。すべてを実行することはできませんから、他のアイデアは思い切って捨てましょう。
そして、最後の (3)俯瞰思考 では、採用したアイデアを実行するための「タスク」「担当者」「期限」を決めて書き出していきます。これによって、いつまでに誰が何をやる必要があって、何が一番キモになるかが明確になるので、実行のスピードが上がります。
A3ノートを使えば、拡大思考、分割思考、俯瞰思考で考えたことや決めたことを、それぞれ一枚の紙に収めることができます。すると、自分の思考がクリアになるだけでなく、他の人への説明も容易になり、多くの人を巻き込みながら問題解決に取り組んでいくことが可能になるのです。
横田伊佐男(よこた・いさお)CRMダイレクト〔株〕代表取締役
1968年、東京都生まれ。横浜国立大学大学院博士課程前期経営学(MBA)修了。米国外資系金融企業のマーケティングマネージャー、CRMコンサルティングの事業責任者を経て独立。現在は、上場企業ホールディングス、政府系金融機関、欧州トップの外資系金融企業の幹部社員や意欲ある中小企業経営者など、年間約3,000人のビジネスマンを対象に、マーケティング戦略やビジネススキルの研修講座を展開中。著書に『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?』(学研パブリッシング)、『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社)などがある。(取材・構成:長谷川敦)(『
The 21 online
』2017年1月号より)
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