タムラカイ,ラクガキノート術,伝わり力
(写真=The 21 online/タムラカイ(デザイナー))

「絵が苦手」な人でも簡単に取り入れられる!

デザイナーのタムラカイ氏が提唱するのは、簡単な絵や図を多用した「ラクガキノート」。「仕事のためのノートに絵を描くなんて……」と思うかもしれないが、実は絵や図で表わすことによってイメージが明確化し、さまざまなインスピレーションにつながるのだ。絵が苦手な人でもできる方法を中心に、そのノウハウをうかがった。

文に絵が加わると「伝わり力」が倍増!

メモや記録に、「絵」の要素を入れる――話者の顔、漫画のような吹き出し、イメージを表現した小さなカット。私はデザイナーという仕事をするうえで、こうした「ラクガキノート」を多用しています。一人でアイデアを練るときはもちろん、企画書や議事録もラクガキ入りでまとめたものを、スキャンして共有しています。

この手法は一見ビジネスにはそぐわないようで、実は大きな効用があります。一つは「観察力」が磨かれること。顧客、同僚、時には自分を絵にしようとすることで、それぞれの「本音」と向き合う姿勢が備わります。

その結果、「想像力」も磨かれます。相手のニーズを深く考えるので、提案や企画のクオリティも上がります。

そして何より、絵は「伝える力」が非常に高いのです。文章だけでは素通りしてしまう情報も、絵を添えればポイントが引き立ち、印象が格段にビビッドに。言葉では表現できないニュアンスも伝えられます。

「自分は絵が下手だから無理」と思う必要はありません。人の顔や姿、記号などをごく単純に描き表わすだけです。まずは表情とセリフを書いてみるだけでも良いのです。

一番簡単な入口は、メールの「絵文字」を意識すること。「笑顔」「困り顔」「やる気になっている顔」など、いずれもごく単純ですね。これらの表情を描き加えていくだけで、イマジネーションが大きく広がります。

「ゴールイメージ」を人物の表情で描いてみる

アイデア創造のためには、まず「ゴールイメージ」から絵にすると良いでしょう。

たとえばゴールが「顧客満足」なら、喜んでいるお客様の絵。「この店に来てよかった!」といったセリフを添えるとなお良いでしょう。そして、このゴールに至った理由は何かを想像します。スタッフの丁寧な接客なのか、陳列なのか、商品デザインなのか。そこからさまざまな発想が湧き、具体的なアイデアへとつながっていきます。

これは、自分の中に叶えたい夢や目標があるときにも使える方法です。そこでお勧めしたいのが、「スパイラルマップ」という形式です。

紙の左下に現状を、右上に目標や、達成したときの満面の笑顔を書き込みます。この二つを、螺旋状の描線でつなぎましょう。これは、現在と未来をつなぐ線。螺旋の「輪」の中は、それぞれのステップです。

各ステップで何をするか、それに至るにはどうするかを考え、絵や文字を描き込みます。螺旋の回転の数が合わなくなったら、迂回路を書き足したり、外に書いても良いのです。ラフな原案から清書まで、何度か書き直すのも良い方法です。ゴールイメージが先にあるので、書いていてきっと楽しいはず。

絵で表わすと、感情が乗ります。感情が乗ると、やる気も出ます。先々のイメージが明確になるので、チャンスが来たときの対応も機敏になります。あらゆる「未来」にジャンプアップできるラクガキノートの力を、ぜひ役立ててください。

タムラカイ氏の「ラクガキノート」のポイント

(写真=The 21 online)
(写真=The 21 online)

案件について考えたり、その考えをまとめたりするとき、タムラ氏が愛用するのがA4の白い紙。このままスキャンすれば、クライアントに見せて説明するときなどにも使える。イラストや図をたくさん使うと、イメージが伝わりやすい

個人的に使っているメモ帳

(写真=The 21 online)
(写真=The 21 online)

備忘録として持ち歩いて使っている小さめのメモ帳。こちらは人に見せることを前提としていないが、後で見たときにすぐに意味がわかるように見やすく書いている。ここでも、パッと見たときにわかりやすいようにイラストを描くことも

タムラカイ(たむらかい)デザイナー
1979年、京都府生まれ。美術系大学を卒業後、インハウスデザイナーとして富士通デザイン株式会社に勤務する傍ら、ブログ「タムカイズム」運営や社外イベント等、多彩に活動。「ラクガキ」の楽しさと効用を提唱、企業や学校での講座も行なう。著書に、『アイデアがどんどん生まれるラクガキノート術実践編』(枻出版社)などがある。(取材・構成:林加愛 写真撮影:長塚健)(『 The 21 online 』2017年1月号より)

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