2016年末、カジノ法案が成立したのは記憶に新しい。法案が通過し不安に思う方は少なくないようだが、カジノについては依存症や金銭トラブル等ネガティブな情報が多いが、ディーラーをはじめとした新たな雇用、税収の増加、外国人観光客の誘致等、様々なメリットもある。
カジノを悪とイメージするのは簡単だ。しかし、私たちの生活にはカジノよりリターンの少ない商品が数多くある。例えば日本の宝くじやスポーツ振興くじ、一部の保険・投資信託、FXは控除率という点では良い選択でない。このように耳当たりの良いものが実はカジノより分が悪かったということはよくある。
長期的にカジノで勝つことは不可能とはいえ、勝てるゲームがないわけではない。それは胴元対客でやるギャンブルではなく、ポーカーや麻雀のような対人のスキルゲームである。
ポーカーにはビジネス界の大物がずらり
ギャンブルに馴染みのない方が「ポーカー」と聞くと、ただのトランプゲームというイメージを持たれるのでは無いだろうか。海外では成功した経営者・セレブにポーカー好きは非常に多い。
ビジネスの巨匠ビル・ゲイツ氏、ウォーレン・バフェット氏、オバマ元米大統領、ヘッジファンドマネージャーのデイビッド・アインホーン氏が愛好家として知られている。戦略的かつ競い合うという部分でスポーツとの共通点も多いためか、サッカー界で有名なクリスティアーノ・ロナウド氏、ネイマール氏、水泳選手のマイケル・フェルプス氏など著名なスポーツ選手もポーカーを嗜むことが知られている。
国内でもポーカーの人気が上昇中
日本国内でもポーカーを楽しむ人は増えている。SNSファウンダー・堀江貴文氏(元ライブドア社長)、大川弘一氏(まぐまぐ創業者)はポーカー好きとして知られている。最近ではミュージシャンのGACKT氏がフィリンピンのポーカー大会へ出場し7位に入賞したことがネット上でも話題になった。
枠を拡げスキルゲームという観点でいうと、勝間和代氏(経済評論家)がゲームカフェを都内にオープンしたり、藤田晋氏(サイバーエージェント社長)が「マージャンは仕事」と話したりするなど、やはり国内外問わずビジネス界の大物はスキルゲーム好きが多いのだ。
日本人の活躍は世界でも注目されている。WSOPという世界大会で日本人2名が優勝をおさめたり、海外を舞台にポーカーで生計をたてる日本人も珍しくなくなった。彼らをギャンブル中毒と思うかもしれないが、海外で生活する最低限の語学力、資金、頭脳を備えているのだ。
海外に行くと日本人は数字に強く、ポーカーフェイスで考えが読めないことから、ポーカーに向いていると評価する外国人も多い。トランプ大統領も非常に商売のやりにくい相手として日本人を挙げている。笑顔がなく反応が薄いポーカーフェイスという認識だ。ポーカーの文化にはったりはあってもお世辞はないので多少は信用してもよさそうである。
ポーカーとビジネスとの共通点
ポーカーを出発点としてビジネスの世界に入った人間は少なくない。石油王H. L. ハントは最初の油田をポーカーで手に入れた。トレンドフォローのトレーダー養成機関として有名なタートルズの試験ではギャンブラーが採用されていた。
最近では優秀な人材を見つけるためにプロポーカープレイヤーをチェックするヘッジファンドや証券会社もある。元プロポーカープレイヤーのアーロン・ブラウン氏は「ポーカープレイヤーとして暮らしを立てることに何年間か成功した人間は、優れたトレーダーになる可能性がほかの人たちよりも高いだろう」と語る。
ヘッジファンドであるルネサンス・テクノロジーのジェームス・シモンズは人材確保のために、ウォールストリート・ポーカーナイトというポーカートーナメントを開いた。シモンズは普通のエリートには興味を示さず、実践においてリスクを恐れず冷静にリターンを判断出来る人物を探していたのである。
富裕層に支持される趣味としてゴルフ、トライアスロンがよく挙げられる。これらは人生の縮図を体験できるおもしろさ、ゲームを築き上げる全能感、理不尽な展開に負けない忍耐力など人生やビジネスにも共通する点が多くある。
ポーカーも似た要素はあり、さらに実力と少しの運があれば大金を稼ぐことも夢ではない。ビジネス同様、ポーカーはうまくいけば金銭、名誉、達成感、すべてを満たしてくれるため富裕層に根強い人気があると考える。
以上を踏まえてポーカー界は人材の宝庫である。ポーカーを楽しんでいるということは経済的な余裕と時間的なゆとりがある証明にもなる。素性のわからない相手が参加する異業種交流会・情報交換会に参加するよりビジネスに役立つ人脈作りとしても非常に有効ではないか。(吉田正憲 IR/CSRコンサルタント)