この方法で、会計士&司法試験に独学で一発合格

仕事に家庭に、何かと忙しい40代。働きながら資格取得や英語の勉強をするには、タイムマネジメント術が不可欠だ。弁護士の佐藤孝幸氏は、働きながら米国公認会計士試験と司法試験の勉強を独学で行ない合格した経験を持つ。その独習法も振り返っていただきながら、働きながら勉強するための時間術についてうかがった。

勉強の予定は細かく決めすぎない

「仕事が忙しくて、勉強する時間が取れない」――そんな人に参考にしていただきたいのが、私のタイムマネジメント法です。私は、働きながら米国公認会計士試験と司法試験に合格しました。その体験を元にした実践的な方法をお伝えしましょう。

まず、学習スケジュールを立てる時の基本として、よく言われるのが、「目標から逆算し、日々のスケジュールに落とし込んでいく」ことです。たとえば、資格取得の場合は、試験日から逆算し、残り六カ月なら月ごとのプランを立てて、そこから一週間のプランに落とし込み、さらに日々のスケジュールに落とし込むといった具合でしょう。

目標から逆算するのは私も賛成ですが、一つ異なることがあります。

それは、「細かく逆算しないこと」。具体的に言えば、「この月には基礎固めをする」といったざっくりとした長期プランだけ立てておき、あとは、今日、明日の予定を立てるだけ。週ごとのスケジュールなどは細かく立てなかったのです。

なぜなら、細かく立てたところで、すぐに予定が狂うからです。勉強だけに自分の時間を費やせるならともかく、仕事や家庭を持ちながら勉強すると、急な残業や子供の急病など、意図しないことで予定が崩れます。すると、今日やるべきことが繰り越され、それが続くと、挽回するのが困難に。結局、予定を立て直すだけでなく、達成できなかったことでモチベーションも下がります。

週末をバッファにして、「平日の遅れを週末に取り返す」というスケジュールを立てる人もいますが、私はそれも危険だと思います。週末は時間がありそうに見えますが、何かと用事に追われたりして、思ったより時間がとれないものです。すると、平日の遅れを取り戻せず、ますますストレスがたまります。

それなら、なんとなく長期プランを念頭に置きながら、今日、明日で何をするかだけを考えるようにした方が、ストレスが溜まらなくて良いというわけです。

日々の計画を立てるときのポイントは、一日のノルマを確実にできる範囲にとどめること。すると、目標が達成しやすくなるので、勉強が楽しくなり、「もっと勉強したい」といった好循環に入れます。

要は、忙しい中で勉強を続けるには、モチベーションを保つことが重要だというのが、私の考えです。

邪魔されない「朝」に効率よく勉強する

もっとも、「そんなに余裕を持っていては、試験当日までに勉強が終わらないのでは?」と心配する人もいるでしょう。確かに、最低限の量をこなすには、1日の勉強時間をできるだけ多く捻出することが必要です。

日々、時間を確保するためには、まず、出勤前の朝の時間を活用することが大切です。朝は頭がスッキリしている上、仕事の連絡や遊びの誘いなどのジャマも入らないので、集中して勉強できます。私は司法試験の勉強をしていたときは、朝6時にカフェに行き、始業時間の9時までの約3時間を勉強に充てていました。

さらには、往復1時間の通勤時間も、貴重な勉強時間です。とくに早朝は座っていけるので、落ち着いて勉強ができました。

夜、帰ってからもできるときは勉強していましたが、帰宅までの4時間の勉強ですでに1日の目標はクリアしていたので、精神的にも余裕がありました。

通勤時間などのスキマ時間を活用するために、私は、立ってでも勉強できるような準備をしていました。たとえば、問題集はできるだけ小さくて薄いものを選び、さらには一部のページだけを破って、持ち歩いていました。「次の駅に着くまでに、問題を1問解く」などとゲーム感覚にすると、楽しく勉強に取り組めました。その他、聞くだけで良いオーディオブックを活用するのも良いでしょう。

早朝に勉強し続けるためには、早く寝ることも大切です。睡眠時間が足りないと、能率が上がりませんし、毎日続きません。私は毎日7時間は寝るようにしていました。

早く寝るためには、仕事のタイムマネジメントもしっかり行ない、残業をしないことが不可欠です。たとえば、作業時間を予測して、その仕事にかけられる時間を決めて、制限時間内にこなすこと。私はメールの返信にかける時間も「1通につき3分以内」と決めていました。

また、仕事の優先順位を決め、優先度と重要度の高いものからこなし、低いものはやらないようにしていた。そうしたことを積み重ねることで、睡眠時間を確保できました。

ノートを作るのは時間のムダ!

せっかく捻出した時間を有効活用するためには、効果の低い勉強方法を見直して、ムダなことをしないことも大切です。

個人的にその最たる例だと思うのが、「ノートを作ること」です。頭の中を整理する目的であれば、まったくのムダではないかもしれません。しかし、多くの人がきれいに書こうと考えてしまうため、やたらと時間がかかります。また、あとで見直して役立つといっても、受験途中の人が作ったノートが上手くまとまっているとは思えません。それなら、既存のテキストに書き込みをしていった方が効率的です。

「どのテキストが良い」とか「今年はこの問題が出る」といった受験情報をネットでチェックするのも、要領が良いように見えますが、実際は時間のムダづかい。玉石混淆の情報に惑わされ、あれこれ迷っている時間があったら、目の前の問題を1問でも解いたほうがよほど有益です。

また、時間を有効活用するために、私は、一つの科目に没頭するのではなく、複数の科目を同時並行で進めるようにしていました。人は、同じことをずっとやっていると、飽きてくるものです。目先を変えることで、集中力が保てますし、科目ごとの勉強量に偏りができるのも防げます。

佐藤孝幸(さとう・たかゆき)弁護士、米国公認会計士
1969年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系銀行に就職。働きながら米国公認会計士資格の取得を目指して勉強を開始し、わずか1年で合格。その後、米国の大手会計事務所に就職し、渡米。帰国後を視野に入れて、米国在住のまま司法試験の受験勉強を開始し、2年間の独学で帰国後に一発合格。著書に、『働く人のための超速勉強法』(大和書房)などがある。公認内部監査人(CIA)、公認金融監査人(CFSA)、公認不正検査士(取材・構成:杉山直隆)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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