2016年に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業が57社にのぼることが東京商工リサーチの調べで分かった。調査を開始した2008年以降で最多だ。不適切会計が急増する原因は会計知識の不足やコンプライアンス意識の欠如などが挙げられる。
不適切会計は調査開始時の2.2倍に急増
調査によると、不適切会計を開示した企業は、2016年は57社58件で、過去最高だった15年の52社53件を上回った。調査を開始した08年から12年までの4年間は、ほぼ変わらなかったが13年から増加。16年の57社58件は2008年の25社25件から倍増している。。
内容別にみると、一番多いものが「誤り」で25件(43.1%)だ。続いて「粉飾」が24件(41.4%)、「着服横領」が9件(15.5%)。企業会計には、時価会計や連結会計など厳しい会計手続きの知識が必要となる。正しい会計知識不足、さらに企業の人手不足が不適切会計を生み出す要因となる。
「粉飾」では、子会社や関係会社との間で売り上げを過大計上させる、売上原価を先送りさせるなどの内容があった。企業側は株主に期間利益のねん出や業績の拡大が求められている。そのため高い目標を設定し、それを達成するためのノルマが強化されている。経営計画と現状との間に生じたギャップを埋めるために、不適切改正が増加している側面もある。
その代表的な事例が2016年10月に発覚した日鍛バルブの不適切会計だ。3つの工場において、棚卸資産の在庫金額を合計2億円過大に計上していた。月次計画が大幅に達成できなかったことを工場外部の上長に報告できず、計画を達成したかのようにみせかけるために不正が行われたものである。厳しいノルマが現場を追い込み、管理部門とのコミュニケーション不足が不正を生み出すということがよくわかるのではないだろうか。