今後はブランディング化がカギか?

新興市場が成熟するまでの間は、価格の安さや機能面での価値が有利に働きますが、いったん市場が成熟した後は欧州のようにブランディング化がカギになっていきます。中国等の新興市場では、まだ価格や機能での価値によって商品が選ばれますが、それでも薄利多売になるため利益率が向上しません。今後は、機能面の価値のみならず、顧客に高付加価値を感じさせるブランディングが必要となってくるでしょう。しかし、それは車の開発段階からコミットしなければならないテーマであるため、会社のトップがビジョンそのものを刷新しない限りは、取り組みづらい課題でもあります。その一つのモデルケースに成りうるのが2013年度の営業利益率が13.6%と業界1位の利益率を誇る富士重工業です。今でこそ高利益体質となったもの、長らく苦境が続いており、1990年代は日産傘下にいたものの、2000年代に日産が株を売却してゼネラルモーターズが取得。その後、ゼネラルモーターズも業績悪化により株を放出して、トヨタ傘下に入ったという複雑な経緯があります。トヨタグループに入ってから「変わらざるをえなかった」という富士重工業は、それまで多角化していた事業から撤退をして、自動車産業の強みに集中的に投資します。それが「安心と愉しさ」を追求した走りに関わる技術であり、後の衝突安全システム「アイサイト」の誕生に繋がるのです。集中的に投資をして、価値を絞ったからこそ82万5000台を売上げ、前期比14%の成長が達成出来たと言えるでしょう。今後も闇雲に台数を増やすよりは、スバルブランドの向上に力を入れることを明言しています。引き続き「安心と愉しさ」を実現するために新設計の次世代プラットフォーム、通称SGPを2016年に投入予定で、デザインについても引き続き注力をしていくようです。このように、ブランディングをするためには、明確なテーマが必要であり、それを会社のビジョンとして掲げて上流工程から浸透させていくことが必要になります。今後、ホンダがどういう動きを見せるのか気になるところです。


おわりに

13年度の業績は増収増益となったものの、利益率に一抹の不安がよぎるホンダ。実は、二輪車部門に限ると営業利益率は10%近く、高収益体制となっています。商品そのものは低価格モデルであるものの、生産および販売については新興国主体で行っているためです。高付加価値をつけたブランディング戦略が成り立たない限り、今後は自動車についても国外に拠点を移す可能性があるかもしれません。現在の社長、伊東孝紳氏は就任当時に「良い物を早く、安く、低炭素でお届けする」という経営方針を述べたそうです。しかし、富士重工の「安心と愉しさ」に特化した走りを目指すというスローガンに比べると、対象がフォーカスされていない印象を受けます。今後の経営方針がどう打ち出されるかがカギになっていくことでしょう。

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