職場のいじめや嫌がらせが、社会問題化しています。ハラスメントによる労働紛争相談の件数は年々増加しており、相談理由としては解雇に次ぐ多さです。厚生労働省によると、中央労働災害防止協会の「パワーハラスメントの実態に関する調査研究」の報告書では、東証一部上場企業の43%で問題が発生しており、82%がハラスメント対策は経営上の重要な課題であると回答したといいます。

今後、職場では性別・年齢・国籍・雇用形態・障害の有無におけるダイバーシティ(多様性)はますます進んでいくでしょう。快適な職場環境や健全な企業経営の障壁になりうるハラスメントに対し、企業および労働者は知識と理解を深めることが求められています。

ハラスメントの影響はどこまで

2010年11月から2011年2月に厚生労働省が行った「仕事のストレスに関する全国調査」によると、労働者のうち6%が「職場でいじめにあっている」と答え、15%が「職場でいじめにあっている人がいる」と回答しています。職務上の権限を持つ人物からのハラスメントは、受けた人の心の健康に深刻な影響を及ぼし、休職や退職、最悪の場合自殺に至る可能性があります。

また、ハラスメントは受けた者だけでなく、行った者への影響も無視できません。悪意の有無にかかわらず、ハラスメント加害者は周囲の信用を失い、状況によっては懲戒処分や訴訟の対象となることもあります。間接的に所属するグループの生産性を低下させ、評価に影響することも考えられます。

企業に与える影響も甚大です。社員のモチベーション低下は生産性の低下にもつながり、業績悪化の原因となります。休職者や退職者がでれば、人事コストの損失も少なくありません。ハラスメントの存在に気づきながら放置した場合、使用者として民法上の不法行為責任や安全配慮義務違反、男女雇用機会均等法における法令違反、安全配慮義務違反が問われることとなり、明るみになった時のイメージダウンは大きいでしょう。

多様化するハラスメントの種類

職場で起こりうるハラスメントには以下のようなものがあります。

<よく知られたハラスメント>
セクシャルハラスメント:職場における性差別的な要素を含む一切の言動
パワーハラスメント:職務上の優位性を利用して精神的・身体的苦痛を与える行為
モラルハラスメント:言葉や態度等による精神的な暴力、嫌がらせ

<職場に起こりやすいハラスメント>
マタニティハラスメント:妊娠や出産者に対する精神的・肉体的な嫌がらせ
パタニティハラスメント:育児休暇や時短勤務を希望する男性に対する嫌がらせ
リストラハラスメント:リストラ対象者を自主退職に追い込むための嫌がらせ
セカンドハラスメント:被害を訴えた者に会社がおこなう二次的な攻撃

<職場・職場外でも起こりやすいハラスメント>
アルコールハラスメント:飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為
エアーハラスメント:その場の空気や雰囲気を意図的に悪くする行為、名誉棄損
スメルハラスメント:体臭や口臭、香水などをはじめとする臭いによる迷惑行為
スモークハラスメント:喫煙に関する嫌がらせ行為

<グローバル化が進んだ時に危惧されるハラスメント>
エイジハラスメント:年齢を理由とした差別、嫌がらせ
ジェンダーハラスメント:固定概念による性差別、役割分担の押し付け
パーソナルハラスメント:容姿やクセなど個人的なことに対する嫌がらせ
レイシャルハラスメント:人種的な理由に基づく差別、嫌がらせ

なお、上記は一例です。ハラスメントの多くが業務上の指導との線引きが難しいという性質から、加害者は無意識に行ってしまい、被害者は被害を訴えにくいという問題が起こりがちです。逆に、問題がない行為でも、被害を訴えられたために組織が委縮してしまうというケースもあります。企業としても、明確な定義がないと対策を講じることが難しくなります。

そのため、何がハラスメントに該当するのか、関係者が「共通認識」を持つことが重要です。具体的にどのような言動が、どのハラスメントに該当するのかを知ることによって、職場でのハラスメントの発生を抑えることができます。

遅れがちな企業のメンタルヘルスケア

労働者のメンタルヘルス対策は、労働関係法令によって事業者の責任と位置付けられています。しかし、2013年の労働者健康状況調査によると、実際にメンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は全体の47.2%に過ぎません。健康診断は91.9%と身体的なケアは定着しているものの、社員の心の健康にはやや遅れがあることが分かります。

そのような中でも、職場でのハラスメント対策に成功している企業は数多く存在します。予防策としては、トップメッセージの発信、就業規則や労使協定またはガイドラインでの規定、アンケートによる実態把握、社員研修による教育・周知があげられます。また予防にとどまらず、企業内外への相談窓口設置、産業カウンセラーとの連携、現場責任者の設置など、解決策にまで踏み込んでいる例もあります。

厚生労働省は労働環境の改善に力を入れており、働く人のメンタルヘルス専門のサイト「こころの耳」を運営しています。その中の「事業者・上司・同僚の方へ」には、事業者として取り組むべき施策や関連法案の解説、支援・助成制度など詳しい情報が載っているので、ぜひ目を通しておきたいところです。(提供: フクリ!

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