JR東日本 クルーズトレイン

JR東日本は6月3日、2017年春ごろを予定しているクルーズトレインの概要を発表しました。JR東日本のリリースによると、編成はラウンジカー、ダイニングカー付の10両編成。客室はデラックススイートルーム2室。スイートルーム15室となるため、1編成の定員は34名。山手線の車両1両の座席数は56名ですから、それよりも少ない人数で1編成を占める豪華空間です。JR東日本がクルーズトレインを走らせる狙いは何でしょうか?本稿ではJR東日本の鉄道事業とその他事業への貢献という観点から、クルーズトレインの狙いを分析してまいりたいと思います。


JR東日本の多角化:不動産事業の利益率が高い

JR東日本といえば、鉄道会社と思われがちですが、実際の収益は駅スペース活用事業(いわゆる駅ナカ、ショッピング・オフィス事業(不動産事業)その他事業(ホテルやカード等)の事業でも稼ぐ構造となっております。表1はJR東日本の事業分野別営業収益(売上)・利益を示したものですが、運輸業で全体の3分の2を占めるもの、駅スペース、ショッピング・オフィスといった不動産系の事業で残り3分の1となります。さらに、ショッピング・オフィス事業(不動産事業)の方が利益率、伸び率ともに運輸事業より高くなっており、今後は不動産事業の方に注力していくことが伺えます。また、2013年3月期の決算説明会では、「香港、台湾からの観光客の取り込み」と「乗ることが目的となる列車づくり」とあり、クルーズトレインはその目玉商品となることが考えられます。

表1 JR東日本の事業分野別営業収益・利益

(単位:億円・%)

2014.3 実績

2017.3計画

営業収益

営業利益

利益率(%)

営業収益

伸び率(%)

運輸業

18,274

2,673

14.6%

18,730

102.5

駅スペース

活用事業

4,009

360

9.0%

4,030

100.5

ショッピング・オフィス事業

2,510

720

28.7%

2,810

111.9

その他

2,234

326

14.6%

2,340

104.7

合計

27,029

4,067*

-

27,910

103.3

*調整額として▲13があるため、各項の和とは一致しない

出所:JR東日本IR資料より筆者作成