日本では「全人代」として報道されるが、中国では第十二回全国人民代表大会第五次会議と第十二回全国政治協商第五次会議を合わせ「両会」として報道される。

日本メディアは、経済成長率目標や習近平主席の神格化など個々のテーマを報道していたが、中国ではどのように報道されていたのだろうか。官製メディアの特集記事から見えてくるものを探してみよう。

「人民代表」習近平

人民日報の運営するサイト「人民網」のトップには“人民代表”習近平という見出しが踊る。

某会議の際、背景に映ったこの文字が話題となり、ネット上で拡散した。これは人民の中を走り回り“黄土地の息子”(黄土地は中国の大地の意)を自称する習主席にぴったりということのようだ。大衆の心に寄り添う人民代表・習近平の真実を表しているとまで解説されている。

さらに2002年の全人代代表だった習近平・福建省長の談話まで、引っ張り出して載せている。そのとき習省長は、「我々は政府の文字の前面に“人民”の二字を明記しなければならない、そうしてこそ群衆の悲喜や冷暖を共有できるのだ。」と強調していた。

つまり習主席は昔から常に人民とともにあった。したがって共産党の指導的核心として、権力を一身に集めるのは当然と言いたいようである。日本で報道された通り、神格化プロセスは着実に進んでいるようだ。

514件の審議と6つのポイント

次に実際の内容を見てみよう。大会期間中に審議された議案は514件だった。そのうち人民代表たちが連名で提出したものは506件である。ここだけを読むと立法府は立派に機能しているように見える。人民網ではこれらを「図解する」として以下6つのポイントにまとめている。

(1)習近平主席の“要論”--これは習主席が参加した個別会議の紹介とそのときの発言内容をまとめたもの。

(2)関心の高い10の民生問題に閣僚たちが明確に答えた--▽携帯料金▽医師の地方派遣▽高額の薬価▽小中学生の通学▽社会保険負担減▽個人減税▽年金運用▽公共自転車システム▽大気汚染▽消費者保護

(3)李国強総理記者会見12の要点--▽中国経済▽中米関係▽グローバル経済▽行政の簡素化▽朝鮮半島問題▽創業支援について▽労働力の適正分配▽不動産所有権の期限延長▽アジア太平洋地区問題▽減税▽台湾政策▽発展の方式と組織論

(4)フランスの人口に相当する6600万人の脱貧困化計画--「習近平の眼中にある最も大事な民生工程」というサブタイトル付き。

(5)地球を30周、農村に118万4000キロの道路建設--道路だけでなく危険な古い家屋の改修等、農村の環境改善を行う。

(6)農村の低社会保障水準を改善ーGDP伸長率を大きく上回るスピードで、医療保険、年金、教育予算を充実させる。

秋の党大会までは安全運転か

これらの報道ぶりから見えてくるのは、農村の重視である。6つのポイントのうち(4)(5)(6)は農村へ向けた施策であり、全体の半分を占めている。都市政策の混乱は地方政府の責任、農村の脱貧困の成功は中央政府の功績ということにしたいのだろうか。農村の揺るぎない支持を得て、習主席の神格化を進めるストーリーのようにも見える。

習主席は毛沢東への尊崇を隠していない。農民の支持を武器として政権を奪取した毛の手法を、自らに重ねている可能性は高い。

中国には、国際政治の力学や経済情況とは関係ない党内政治の力学が働いている。秋の第19回党大会を半年後に控え、それらの力はマグマ溜まりに蓄えられている。党大会までは李総理の言う12の要点は、安全運転でこなしていくと思われる。大きな国際的摩擦は、避けようとするだろう。

今後の焦点はやはり“あの人民代表”の動きである。自前の人事だけでなく、中央政治局の改組まで考えているとすれば、マグマは突如大噴火しかねない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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