今後の国内環境について
では、収益のカギとなる工作機械業界、自動車業界の収益見通しを見て参ります。まず、ファナックの2013年度における国内売上は1,057億円であり、連結売上の23%になります。ゆえに、国内売上に依存した収益構造ではないことが伺えます。
一方、工作機械業界の国内受注は、日本工作機械工業会の発表ではここ1年は300億円台を推移しており横ばい傾向が続いています。また、自動車産業の設備投資マインドは日銀短観によると、2013年度下期は前年度比+12.2%、2014年度上期、下期はそれぞれ+28.0 %、-6.3%となり、前期にピークがあることがわかります。国内環境がファナックの収益に与える影響については、2014年度前期は若干のプラス、2014年度後期はマイナスとみてよいのではないでしょうか?
今後の海外環境について
ファナックの収益にカギを握るのが海外、特に中国や台湾への売上動向です。ファナックの売上のうち、アジア地域が占める割合は26.4%(2013年度第4四半期ベース)であり、2013年度第4四半期の前四半期比伸び率は26%となるなど、売上目標達成のカギはアジアと考えられるからです。
では、アジアの受注環境ですが、iPhone特需に湧いています。日本工作機械工業会の発表では2013年1-3月期の中国向け工作機械受注は728億円と前年比233.5%の伸びを記録しています。また、スマートフォン加工用の小型旋盤に強みを持つツガミの中国子会社は2014年3月期の実績は、売上186億円、純利益3億円となります。また、2015年3月期では売上320億円(+134億円)、純利益30億円(+27億円)という予想を出しています。
このような受注状況を考慮すると、ファナックのアジア向け売上も2014年度上期は前期比1.5~2倍の伸びとなる1,200~1,600億円(+400~800億円)を計上する可能性があります。会社予想の売上高は2015年3月期では前年比約800億円増ですから、アジア分の売上増が2倍あれば、半期で達成する可能性があると言えるでしょう。ゆえに、ファナックの業績が上ぶれする可能性は十分あると筆者は考えています。
リスク要因について
一方で、リスク要因についても考慮する必要があります。上半期の業績の伸びは中国のiPhone関係の部品需要に依存しており、新型iPhoneが売れなかった場合は下半期の受注、売上が前年比マイナスに落ち込む可能性があります。しかしながら、昨今の先進国の好調な景気動向を考えると、新型iPhoneが売れなくなる可能性は少ないと筆者は考えています。
また、下半期に中国のiPhone関係の部品需要に代わる成長の柱を持つことができるかが、下半期の売上を伸ばすカギとなります。ただし、先進国経済は堅調であるため、中国のiPhone関係の部品需要が沈んだとしても、2013年度とほぼ同程度の売上はキープすると見ています。
四半期利益の進捗率とアジアの売上の伸びに注目
ファナックの2014年度連結決算予想は、先に述べたように中国のiPhone特需でほほ達成できると考えられます、ゆえに、第1、第2四半期の利益進捗率がほぼ100%に近い値に行っているか。アジアの売上が前年比2倍程度まで伸びているかが、連結決算予想が達成できるかを判断するカギとなります。もし、両項目ともに達成していれば、株価上ぶれの可能性は高いと筆者は見ています。
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